Ver.4/第28話
「これで、どうだ?」
新たに取得した新スキル〈統合〉を使い、最初に試したのは金属のロープであった。前回作った物は、強度が低すぎ、ハルマひとりの重さでさえも耐えることができずに千切れてしまっていたのだ。
「おお! なんか、いけそう!」
細さは同じながらも、わずかに重さは増えてしまったが、辛うじて使える増加幅に留まった。
ハルマは、早速、前回試した山岳エリアに向かい、同じように〈クライミング〉のスキルを使って崖にペグを打ち付け、試作品のワイヤーロープ★をつなぐ。
ペグとロープはスキルのアシストによって、勝手にカラビナでつながり、グッと力を込めて引っ張ると手応えを感じた。
恐る恐る、体重をかけて自分の体を持ち上げる。
「お?」
前回感じた頼りなさはなく、ロープがグニャ~と伸びる感覚もない。
少し上り、スキルによってハーネスを装着し、ロープを固定する。
足場とハーネスを支点にして、両手を自由にさせる。
それでも、ロープに破損は見られない。そのまま、ペグを取り出し、ピッケルハンマーを使って、一段高い場所に打ち付ける。
そこに、またロープをつなげる。
同様のことを数回くり返し、ついには崖を登り切ってしまった。
「へっへっへ……。やったー! ロープの完成だ!」
もう少し調整の余地はあるだろうし、他の人たちにも使い勝手を確認する必要はあるだろうが、実用に耐える物ができたことに間違いなかった。
続いて手を付けたのが、紙だった。
紙の質そのものは、実は劇的に変化しているわけではない。抽出機が見つかり、MPポーションが活発に作られていた頃、こぞって改良されたことで、高品質な紙が作られるようになったのだが、そこで高止まりしてしまっているのだ。
というのも、採取ポイントがCランクで止まってしまっているため、新たな素材が見つかっていないのだ。
そこにきて〈統合〉である。
ハルマ自身は、MPポーションを作るのに紙は使っていないが、HPポーションの方では使うことがある。
消費アイテムの質の向上は、生産職として純粋に楽しい部分だった。
ただ、今回の最大の目的は、そこではなかった。
「久しぶりに作ったけど、やっぱり、でかいなー」
2メートル四方の紙を3枚作り、〈統合〉させる。
スキルを使う前の紙も、前回作った時よりもじゃっかん良質なものができていた。これを〈統合〉することで、かなり上質な紙となった。
そして、スキル〈折り紙〉を使って作るのは、もちろん、ドラゴンである。
一度作ったことがあっただけに、作業はスムーズに進んだ。もともと、スキルのアシストがあるので、テキパキと巨大な紙が折られていく。
作業時間も20分もかからずに終了し、見覚えのあるものが出来上がった。
「できたー」
「すごーい! ドラゴンだ!」
マリーもずっと横でわくわくしながら見守っていたこともあり、興奮気味に完成したドラゴンを見つめる。これを見るのは2度目のはずなのだが、こういうところはNPCなのだろう。
しかし、マリーとは別に驚く者もいた。
「まあ。立派なドラゴンですね」
マリーと一緒になって作業を見守っていたエルシアだった。
「ヤタジャオース。どうだ?」
「ほお。悪くない。今の体よりも馴染みそうじゃ」
「良かった。じゃあ、使ってくれ」
ヤタジャオースにレベルはない。代わりに、より上質な体を与えることで強化されていくのだ。しかし、なかなか上の素材が見つからずに、更新する機会がなかったのである。
ハルマの指示に従い、ヤタジャオースは光に包まれると、出来上がったばかりの折り紙へと結ばれる。
魂と思われる光の塊が、結ばれた線を伝って移動すると、今まで使っていた体は、元の折り紙のドラゴンへと姿を変えた。
代わりに、少しだけ迫力を増した小さなドラゴンが誕生したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます