Ver.2/第58話
イベントが始まって1週間。ハルマは門を見つけるのに意外と苦労していた。
彼の場合、人目を忍んで行動しなければならないという、誰が決めた訳でもないルールがあるせいで、行動範囲が限られているというのも大きかった。
また、せっかく見つけても誰かが挑戦中で入れず、待つかどうするか悩んでいる間に他のプレイヤーがやってきて、そっと退散するということも少なくなかったのだ。
何よりテスト期間に重なっていたため、時間が取れなかったことが最大のネックであったのだが、それも終わり、ようやく本腰を入れて探すことができるようになっていた。
それでも、勉強の息抜きに遊んでいる時だけでも成果はあった。普段から人の余り寄り付かない場所での活動を続けていたこともあり、未攻略のダンジョンを見つけることも珍しくなかったのだ。
「お? 見っけ」
未攻略の門には大きな錠前が付いており、これが消えると全体報酬用のカウントが進むというわけだ。また、誰かが攻略した門は、他のプレイヤーのマップにも表示されるようになるため、後になればなるほど見つけるのは容易になるが、競争率も高くなる。
「見つけたのはいいけど、プラチナっすか」
プラチナの推奨レベルは40である。現在、最上位プレイヤーのレベルでも45程度と言われているので、かなりの難関だ。ただ、これも戦闘系のダンジョンであればの話となる。
そして、錠前が付いている以上、当然、この門に関する情報はない。
「今のところ、見つけたダンジョンは4つ。殲滅型が3回、納品型が1回。見つけたタロットカードはまだ3種類なんだよなー。カギはだいぶ溜まってるけど、意外と消化できないんだよなあ」
銅1回、銀2回、金1回で、合わせて5枚のタロットカード片を手に入れているが、重複も2枚あるのだ。ただ、破片なので3枚は集めなければならないので、最初のうちはかぶることも気にならない。
どうやら、ダンジョンタイプによって入手できるタロットカードに偏りがあるらしく、殲滅型にばかり当たっているため、上手いこと種類が増えていないらしい。
「うーん……。プラチナって確か3枚もらえるって話だったよな? その分、かぶりの可能性も高いらしいけど、挑戦してみる価値はあるよなあ」
周囲に他のプレイヤーの気配もなかったため、門の前でじっくりと考え込んでいたが、こういう時に急かすのは、やはりヤタジャオースだった。
「行かぬのか?」
その一言にハルマはジト目を向け、深く溜め息を吐き出した。
「はあー。行くよ。最初から行くつもりでしたよ。でも、怖いじゃん?」
仲間のNPC達からの共感は得られることなく、ハルマは門をくぐることにするのだった。
「ん? これは、何タイプだ?」
殲滅型ではないことだけは確かであろう。今まで、銅、銀、金と殲滅型は経験しているが、いずれも入ってすぐにモンスターに囲まれていたからだ。
また、納品タイプのようにアイテムが落ちている気配もない。
ちなみに、納品型のダンジョンは、いたる所にアイテムが配置され、指定の場所に指定のアイテムを時間内に届けることでクリアとなる。これは〈発見〉のスキルも有効であるため、ハルマには持って来いなのだが、あまり数は多くないようである。
視界の中に2分の表示が浮かび上がり、カウントダウンが始まると、ルールも同時に表示された。
『ダンジョンを徘徊するモンスターに捕まらずに、宝物庫までたどり着け。制限時間は20分』
「おー。これが潜入型か。面白そうだな」
初めてのタイプのダンジョンに興味がわくのと同時に、戦闘タイプのダンジョンではなかったことにホッとするハルマだった。
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