Ver.2/第57話

 ひとりでのんびり散策しながらイベントに参加したいところだが、アウィスリッド地方に進めているのがハルマだけであるので門は設置されてなく、他のエリアに向かわなければならない。

 で、あるなら、無理に目新しい場所を歩き回るよりも、慣れた場所の方が良いように思えた。

「とりあえず、村の回りを重点的に探してみるか」

 24のエリアに3000の門があるということは、1つのエリアに120前後はあるはずだ。広大なフィールドとはいえ、素材採取で普段から歩き回っているハルマからしてみると、いつものロードワークと大差なかった。

 今回は、トワネの〈擬態〉のために武器を登録させようと、ツメと杖と短剣を準備してある。ただ、ハルマが装備しなければならないため、STRと重さの関係で、どうしても並以下のものになってしまう。

 装備して戦闘に参加するだけで、倒すのは仲間達に任せればいいかと思ったが、どうやら、ただ装備して戦闘に参加しただけではダメらしく、ちゃんと戦闘ダメージを与えなければ参加したと認められなかった。

 短剣は片手剣に比較的近い武器なので簡単かと思ったが、より相手に近寄らないとならないため、思った以上に危なく感じていた。

 短剣でも危なかったのだから、ツメはなおさらキツかったものである。

「はあー、こんな武器、皆よく使いこなせるな」

 とはいえ、ハルマもレベルは30になっている。VITに一切ポイントを振っていないが、レベルアップによる成長だけである程度は耐えられるようになっている。この辺りは初心者向けのエリアであるので、推奨レベルも低いため、多少動きが危なっかしくてもゴリ押しできる程度にはなっている。

 そうやって森の中をふらふらと彷徨っていると、銀色の門を見つけることができた。

「銀、か。確か戦闘系の場合、推奨レベルは銅で10、銀で20って感じだったよな?」

 使い魔を呼び寄せ、イベント関係のページを確認する。

「うん。パーティ人数で難易度に変化はあるけど、いける難易度だな。俺の場合、いつもの調子ならソロ扱いになるだろうし」

 どうしたものかと考えるも、入ってみないことには何もわからないので、意を決して門をくぐる。


「くっそー! ハズレだ!」

 ダンジョンに送られた直後、ハルマは叫んでいた。

 すでに周囲には数え切れないほどのモンスターが襲いかかろうと待ち構えていたのだ。どうやら、殲滅型のダンジョンだったらしい。

 視界の端に2分の表示が出され、ゼロに向かって進んでいた。

 そして、視界の中にアナウンスが表示された。


『ダンジョン内にいるモンスターを殲滅せよ! 制限時間は15分』


 目の前だけでも、ざっと数えただけで軽く30はいる。

 ……が。

 まあ、当然のことながら慌てたほどの苦労はなく、あれよあれよと終わってしまっていた。

「うん。まあ、みんな強いね」

 ハルマもファイアーブレスくらいはしようと思っていたのだが、そんなことをするまでもなく、ものの数分で目の前の集団は駆逐されていた。

 引き続きダンジョン内を進みながら、小部屋になっているところで殲滅戦を数度くり返し、特に苦労することなくクリアとなったのだった。

「報酬は、っと」

 どことなく、スン、と無の表情になりながら、タロットカードを探していると、最後の小部屋の中央に机がひとつ浮かび上がった。

 何があるのかわからないので慎重に近寄ると、机の引き出しが勝手に動き、中から1枚のカードの破片が飛び出してきた。

「こういう報酬の渡し方なのか。にしても、銀なのに報酬1枚だけかあ……。期間長いから、ちょっと渋めなのかな? となると、カギの数に限りあるから、最初の内は金以上を狙った方がいいのか?」

 飛び出してきたカードを受け取ると、ダンジョン攻略のアナウンスが表示され、元いた場所に戻されたのだった。

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