Ver.2/第59話

 ルールが表示されたのと同時にマップも表示された。

 通常、行動した範囲しかマッピングされない上に、モンスターの位置は表示されないのだが、全体図と一緒にモンスターの位置もリアルタイムで移動している。

 潜入型のダンジョンに徘徊するモンスターはどれもマシン系だった。外で見かけるモンスターと違い、目からライトが発せられ、警戒範囲を示している。

「あのライトの中に入ると見つかるってやつだな。しかし、プラチナ門だけあって動きが早えぇ。俺のAGIじゃ、どうやっても見つかるぞ?」

 警備モンスターの動きは規則性があり、それを外れることはないのだが、その反復する動きが俊敏なのである。

 捕まる前に倒してしまえればいいのかもしれないが、装甲は頑強そうであり、見るからに倒せないタイプのモンスターであることが窺えた。おそらく、こちらから攻撃を仕掛けると、近くからわらわら集まってきて、あえなく御用となるだろう。

 天井も低いため、トワネに天井を伝って運んでもらうこともできそうにない。

 要所要所に一休みできる安全地帯が設けられているのだが、ハルマの足ではそこに走り込む前に見つかるのは必至である。

「ズキンやニノエは楽々進めるだろうけど、俺が目的地にたどり着けないとクリアにはならないよな? きっと」

 腕を組んで考え込むも、制限時間も設けられている。じっくり解決策をひねり出す余裕はないという結論に達し、行動に移ることにした。

「ものは試しって言うからな」

 これだけ動きが早いと、40レベルに達しているプレイヤーであっても逃げ切ることは困難なはずである。で、あるのなら、AGI以外に解決方法が潜んでいるはずであった。

 まずは、それを見つけなければならない。

 ハルマはひとつのトラップを取り出し、〈離れ技〉を使って遠くの警備モンスターが徘徊するルートに設置する。

 仕掛けられたベアートラップは、すぐに発動した。

「よし! 足止めはできるな。しかも、特に警戒レベルが上がることもない」

 一定時間拘束できる上に、ダメージとAGI低下を同時に与えるトラップだ。唯一の懸念が、ダメージも与えてしまうので、敵対行動をとってくる可能性があったことだが、身動きできないことにジタバタしているだけである。どうやら、ダメージ判定もなかったことから、そもそも倒せない相手なのであろう。

「ラフとトワネはインベントリに入れるとして、ユララとヤタジャオースは飛んでれば見つからないだろ? ズキンとニノエは、こういう時こそ真価を発揮するタイプだろうから、任せておけばいいよな?」

 そこでふと、視線をマリーに向ける。

「マリーは、ああいうのにも見えないよな?」

 そもそも、モンスターに見えるのだろうか? と、疑問に思うが、それどころではないので検証は後回しにする。今は、見えない、ということにしなければ先に進めないのだ。

 何せ、マリーに気を使っている余裕が一番ないのが、ハルマ自身なのだ。

「えーと? あそことあそこの警備を足止めしてる間に移動して、拘束時間は30秒だから、この距離だと……ブツブツブツ」

 緻密にシミュレーションしている時間もないのだが、ちょっとでも手順を間違えるとゲームオーバーになってしまう。

 マップと、見えている範囲のモンスターの動きからイメージを固めていく。

 宝物庫までの距離はそう遠くないのだが、最短距離で駆け抜けるにはちょっと無理がありそうなので、少し遠回りしなければならない。

 それでも、10分もあればたどり着けるはずだ。

「いざ!」

 最初のトラップが発動したのを確認すると、ハルマは駆け出していた。

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