第4章 救いを求める森の声
第26話
森で素材を集め始めて、すぐにレベルが6に上がった。チップたちはすでに25まで上がっているので、ずいぶんとのんびりしたものだ。
しかし、最前線で強さを求めて駆け巡っているプレイヤーたちも、レベルアップの速度は鈍り始めている。序盤はスルスル上がるものの、そこから先――βテストで解放されていなかったエリア――は単純にレベルを上げるだけでは生き残れない上に、レベルアップに要求される経験値も跳ね上がっていたからだ。
「ようやくレベル6か。さすがにもう少し上げた方がいいか?」
獲得したステータスポイントを、DEXに全部つぎ込みながらふと思う。
自分では戦わず、獲得経験値のほとんどがマリーとラフのおかげで得ているということもあり、少しは自分で戦ってレベルを上げた方がいいだろうかと思い始めたのだ。ここにも所持金に余裕ができたことが影響していることに本人は気づいていない。
「よっ、と」
知らない人が見かけたら、奇妙な光景と思うだろう。
誰に操られるでもない黒猫の操り人形が剣を持って戦い、その後ろから弓でモンスターを倒していくプレイヤーがいるのだ。
素材の採取ポイントはある程度固定で設定されており、その距離はバラバラだ。近いこともあれば見渡す範囲では見つからないことも多い。
これまでは戦闘をマリーとラフに任せ、自分は採取ポイントを探すことに集中していたのだが、今はモンスターを探して戦うことを意識しながら、採取ポイントを見かけたら素材を集めることにしていた。
結果、この奇妙なスリーマンセルの陣形はバランス良く機能していた。
「俺も戦闘に参加したら、この辺のモンスターなら集団でも問題なくいけるな」
発見のスキルによるモンスターの気配の察知は、単独モンスターか複数のモンスターかも色によって識別することができた。
黒いモヤの場合は単独であり、赤みを増すほどに数が増える。とはいえ、3体以上になると全て赤いモヤに括られてしまうので、思いがけない大集団に遭遇してしまう可能性も否定できなかった。ただ、この辺の曖昧さは、スキルかステータスの成長によって変化していくかもしれない。
そうやって、戦闘と採取を繰り返していると、何度目かの勝利の後にアナウンスが表示された。
「お。スキル獲得……、じゃなくてランクアップか」
『スキル〈片手剣の心得Ⅰ〉が〈片手剣の心得Ⅱ〉に成長しました』
『E~Fランク剣技-片手剣を使える』
『片手剣の重さが常時2減る』
『ガード率が常時5%上がる』
【取得条件/片手剣による攻撃で同格以上のモンスターを規定の数討伐する】
またラフのおかげかーと苦笑いを浮かべた直後、続けてアナウンスが表示された。
「ん?」
『スキル〈弓の心得Ⅰ〉を取得しました』
『Fランク弓技を使える』
『弓によるダメージが常時1.1倍』
『DEXが常時40増える』
【取得条件/弓による攻撃で同格以上のモンスターを規定の数討伐する】
「おお! 自力で戦闘スキル覚えられた! しかもDEXも上がる! ……でも、武器によって覚える条件違うんだな」
片手剣はすでに〈心得Ⅱ〉に成長したというのに、弓はようやくスキルを獲得したところである。弓の使用回数が片手剣よりも極端に少ないとは思えなかった。
「武器によって早熟型とか大器晩成型とかあるのかな? うーん。育ててみないとわからんか。幸い、俺の場合ひとりで複数の武器スキルを成長させられそうだし、気にすることもないか」
深く考えたところで徒労に終わると、すぐにモンスター捜索と素材集めに意識を戻す。
そうやって、この日はレベル上げと素材採取に精を出した結果、更に〈発見Ⅰ〉のスキルが〈発見Ⅱ〉へと成長したのだった。
『E~Fランク採取ポイントで発見できるアイテムが少し増える』
『Dランクまでの採取ポイントを発見できる』
『レベル2の罠を見つけることができる』
『E~Fランクモンスターの気配を見つけることができる』
【取得条件/規定値以上のDEXの時、アイテムを定められた数量採取する】
「やりぃ! これで素材集めも更に効率が上がる!」
ハルマはホクホク顔でこの日の採取を終えるのだった。
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