第23話

 拠点を手に入れたものの、詳しいことはわからないため素直に注意事項を読んでみる。

「カギはないけど、所有者権限で出入りできるプレイヤーは制限できるのか。で? アイテムもインベントリとは別に専用の家具に100種までおいて置ける。これは後々重宝しそうだな。あとは……。ん?」

 色々な説明の中から、主だった部分を重点的に頭に入れていると気になる項目があった。

「商業組合管理の家でない場合、開拓エリアは管理プレイヤーの所有地となり、別サーバーに移動されます。そのため、設定したプレイヤーとパーティメンバー以外、エリアに侵入することはできなくなります。開拓地を放棄する場合は、地形とサーバーは元に戻せますが、所定の金額が必要になります。開拓が進み、開拓エリアが村として認定されると、転移場所として登録できるようになります?」

 どうやら、この家はすでに別サーバーに存在し、他のプレイヤーからは認識されていないようである。しかし、ちょっと離れれば今までと同じサーバーの世界であり、窓の外に視線を向けてみても、境界線があるようには感じられなかった。

 驚くほど自然に、且つ、シームレスに往来が可能であるようだ。

「しかし、村か……。確か、マスターが商業組合と教会に話をつければ良いようなことを言ってたよな? いや、待てよ? 村っていうからには村人が俺とマリーだけってわけにもいかないよな。チップたちを誘ってみるか?」

 はて、と、考えていると、マスターの両親がこの村に戻りたいと話していたことも思い出す。

「移住したいNPCをあちこちから連れてこないとダメなのか? な? うーん。そうなると、一気に、ってわけにはいかないな」

 今の拠点は小さなサイズである。

 商業組合の女性職員NPCの話では、このサイズでは職人設備はハルマが使用する種類全部は置き切らないらしい。ということは、拡張しなければならないのだ。

 それに、元々の目的がMPポーションの作製である。これも早めに取り掛かりたかった。

 その上で、村としての機能を充実させていくには移住者用の家を準備しなければならないだろうし、商業組合と教会がどのように関わってくるのかも不明である。

 ただ話を聞いて『手続きは完了しました』で終わりとは思えないので、そこでもいくつか条件を満たりたり、クエストをクリアしたりしなければならないだろう。

「とりあえず、周辺の廃屋を完全に取り壊して、素材を集めつつ場所を確保してから拠点の拡張かな。職人設備は、全部そろえるには所持金が足らないだろうから何か金策も考えないとな。今ならMPポーションだろうけど、そのMPポーションを作るためにお金が要るっていうのが、何とも言えないな……」

 この日は、予定通り、周辺の整地をするだけで、時間が溶けて行ったのだった。




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