第5話
生産職をやっていく上で、DEX極振りの恩恵は確かにあった。
錬金作業以外は成功率に加味されることがわかったからだ。また、成功率だけでなく、できの良さにも影響があることがわかったのである。
「同じものを作っても、できの良さで性能にボーナスが付くんだな。んで、できが良いほど、空きスロットが増えて〈魔加術〉で付与できる効果も増やせる、と」
例えば、鍛冶ギルドでのクエストで作らされた銅の剣にも、できの良さによって+1~+3のボーナスが付き、それはその装備の基礎効果へのボーナスとなっていた。銅の剣の場合ガード率1%が基礎効果であり、ボーナスによって最大2.5%のガード率になる。
そして、空きスロットはボーナスなしでも1つあり、最大で4つとなる。
ちなみに、ハルマがクエストで最初に作った銅の剣は見事+3の性能であり、クエスト達成の報酬にもボーナスがついた。
この空きスロットにどんな効果を付けるかは自由だ。ただし、当然のことながら、武器には付与できるが、防具には付与できない効果といったものも存在する。この辺のルールは細かく決められているが、メニューから簡単に調べることが可能であるのでいちいち覚える必要はない。
また、この辺のルールは、基本的に上位の装備になっても変わらない。
つまり、できの良い装備ほど性能が良く〈魔加術〉によってより良い性能へとランクアップさせることができるわけだ。
ただ、この〈魔加術〉。これは単純にDEXによって成功率が上がると言うわけではなく、運の要素も大きいため常に狙った効果のものが作れるというわけではないこともわかっている。
時には、まったく狙っていなかった効果が事故って付いてしまうこともあれば、一点物に近いレアな効果が付くこともあるらしい。
ハルマはレベル上げもそこそこに、あちこちの町を回っては生産活動に勤しんでいた。
生産作業をするための施設はどの町にもあるのだが、クエストを受注できるギルドであれば、素材屋とプレイヤーバザーと呼ばれる取引所も併設されているため利便性が高いのである。
少ないMPを消費して〈錬金〉しては他の町に移動して、作った材料を使って〈鍛冶〉や〈裁縫〉、〈木工〉で装備品を作っていく。そうしている間にMPもすぐ回復するので、また〈錬金〉するために移動するのだ。
素材は初日にかなりの数を確保していたため、素材屋を併用することで一通り職人仕事を試していくのには困らなかったのである。
そうやって職人プレーを充実させている間に、職人としてのランクが上がり、全ての職で〈見習い〉から〈駆け出し〉へと成長していた。このランクが上がることで、成功率が上がったり新たなレシピが手に入ったりするようである。
「〈錬金〉〈鍛冶〉〈裁縫〉〈木工〉〈細工〉は、何とかなりそうだな。〈調合〉はわりと神経使うし、レシピだけじゃ作れないものもけっこうあるなー。〈魔加術〉は消費アイテム使うから、今の懐具合だと自分で作ったものがある程度たまらないと気軽にはやれないな」
〈調合〉の作業は理科の実験といった感覚だった。
どの素材を使うのかはレシピに記されているのだが、どう作るのかは記されていないのである。なんとも不完全なレシピであるが、これにも理由があった。
作り方によって、性能に差が出るのだ。
刻んでから煮込んで作っても、そのまま煮込んで作っても、目的のアイテムが作れるが、刻んだ方が性能が良くなる、といった感じである。
そのため、詳細は各自で調べてね、というスタンスらしい。
「とりあえず、〈錬金〉できる回数を増やしたいからMPポーションは作りたいんだけどな……。どうやっても作れん」
低ランクの調合設備で使える機材は限られている。しかも、MPポーションのレシピもクエストでもらえた初歩のレシピ集の中に記されていたのである。
必要なのは〈水系素材〉と〈マギアのつぼみ〉。この2種類の素材を使えば作れるはずなのだが、何度やっても失敗してしまうのだった。そして、MPポーション作りに頭を悩ませているのはハルマだけではないらしく、プレイヤーバザーにも出回っている様子はなかった。
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