第3話
多くのプレイヤーがレベルを上げるために手近なモンスターを見つけては戦闘を始めているのを他所に、ハルマはフィールドにチラホラ落ちているアイテムを見つけては拾い集めていく。
手に入るのは、アルヒ草、レアム草、キインの枝、銅鉱石、マギアのつぼみ、ヤレスの花、朝露の雫、蝶の羽根といった、何に使うのか想像できるものからできないものまで様々だった。シリーズタイトルでもないため、見知らぬアイテムも多い。
「1時間かけて集めた素材も、この〈せいれい石〉っての以外は、どれもレアリティは低いのばかりか。ま、モンスターは誰かが勝手に駆除してくれるし、楽に探索できるからいいけどさ」
群れをなしているモンスターは見当たらず、ポツリポツリと点在している。その姿を見つけては血気盛んなプレイヤーが駆け寄っていく。
それでも、まれに見逃されているモンスターを見かけた時だけ、ハルマは弓を使って討伐していった。
「命中率70%ちょっとでも、この辺のモンスターならほとんど一撃で倒せるから、単体なら何とかなるな」
レベルが上がる速度は遅いものの、何に使えるのかわからない素材はどんどん集まっていく。
そうやって、町の周辺を3時間ほどかけてぐるっとひと回りした頃、アナウンスが表示された。
『スキル〈発見Ⅰ〉を取得しました』
「ん? 新スキルか……。なになに?」
周囲にモンスターがいないことを確認してから、表示されたパネルを読み進める。
『Fランク採取ポイントで発見できるアイテムが少し増える』
『Eランクまでの採取ポイントを発見できる』
『レベル1の罠を見つけることができる』
『Fランクモンスターの気配を見つけることができる』
【取得条件/規定値以上のDEXの時、アイテムを定められた数量採取する】
「お! 早速、DEX極振りの恩恵が出た、の、かな? それとも、普通のDEXでも取れるのか? まあ、いいか。地味だけど、生産職を目指すなら便利なスキルだ。この感じだとⅡ、Ⅲって成長していく感じかな。それにしても、罠にもレベルがあって、採取ポイントとモンスターにはランクが存在するんだな」
スキルの取得方法は、こうやって条件を満たすことで自動で発動するものから、店売りのものを購入する方法、クエストの達成報酬として得るものなど様々だ。
取得の条件は詳細に決まっているのだが、明確に公表されているものは少ないようである。
「ところで、この〈モンスターの気配を見つける〉とは、なんぞ?」
小さく首を傾げた直後、解決する。
「ん? あれか!?」
フィールドのあちこちに、今まで見られなかった黒いモヤが現れていた。それをしばらく観察していると、同じポイントにモンスターが出現したのである。
「なるほど。これを頼りにすれば、不意打ちされる危険度は下がるんだな。……待てよ? ってことは」
ハルマは、モヤの出ている場所目がけて弓を構える。
発見のスキルを持っていない者からしたら、何もない所を狙っているようにしか見えない光景だ。
そうして、モンスターがポップしたのに合わせて弓を射る。
……が。
「デスヨネー」
矢はキレイにモンスター目がけて飛んでいったが、するりと通り抜けてしまい、攻撃判定がされることはなかった。
その様子を眺めている内に別のプレイヤーがエンカウントして、戦闘が始まっていた。
「ポップ直後だと、エンカウント判定されない無敵タイムだもんな。一方的に蹂躙は無理か。ま、それ抜きにしても良いスキルだから、問題ない」
この後、新たに取得した発見のスキルの効果を確かめるべく、しばらく探索を続けてその日の冒険は終わりとなった。
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