第738話どうするつもり?
一方的な宣言が終わると、ソフィー魔力が爆発的に向上した。あり得ないことではあるが、出会った頃のフィネに近く、人間だった頃より圧倒的に強い。
もはや誰も、止められない。
「ダンジョンマスターは全ての頂点に立つ存在。それをアンデッドごときが超えるなんて……」
「私が、ただのアンデッドだと思っているんですか?」
妖艶な笑みをソフィーが浮かべた。ぷっくりとした唇からは、エロスを感じる。
「クリエイトアンデッドは、人間の性質を反転もしくは変異させてアンデッド化する魔法ですが、高い魔力と素質、そして……強い執着があれば、高位の存在にもなれるんですよ」
「高位ねぇ。いったいアナタは何になったのかしら?」
「全てのアンデッドを支配し、生み出す存在、アンデッドクイーンです」
初めて聞いた種族名だ。アンデッドの最上位はリッチだと思っていたのだが、話の流れからしてアンデッドクイーンの方が上のようである。
能力や特徴は全て謎に包まれていて、俺なんかじゃ何も分からない。だが、対アンデッドに特化した種族というのは、ソフィーらしいなと感じてしまった。
「魂に少しでもアンデッドの残滓が残っているのであれば、私の支配下から逃れられませんよ」
またカーリンが不自然な体勢で止まった。
声に魔力がこもっていれば、言葉にしなくても意思は伝わるようだ。
フィネの残滓が、この場になって大きく足を引っ張っている。
「どうするつもり?」
初めてカーリンが焦っている姿を見た。ソフィーのアンデッド化までは想定内だったとしても、自身を上回るほどの力を手に入れるとは、思っていなかったんだろう。
「もう黙りなさい」
また、魔力のこもった声だ。カーリンの拘束が強まったようで、無駄口を叩くことすらない。まばたきすら出来ないようなので、先ほどのように抜け出すのは難しそうだ。
ソフィーはカーリンの左胸に手を当てると、ずぶずぶと体内に沈んでいく。血は出ていない。すぐに引き抜かれると、白い球が手の中にあった。
カーリンの瞳からは生気が抜けていて、死んでいるように見える。
リカルダが死者の力を吸収するときに出てくる白い球と似ている。違いがあるとしたら、強い光を発していることだろう。あの中に魂も入っているのか?
「いただきます」
口を開けて、ソフィーは白い球を飲み込んだ。
体内の魔力がさらに上がって、今まで出会った魔物の中で最大のものになる。この世界でソフィーに勝てる存在なんているのか? なんて思わせるほどの力がある。
俺が愛していたソフィーは、もう二度と戻ってこない。
そう感じさせるには充分であった。
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