第737話元聖女のアンデッドが誕生したのよ!
勝てないと悟って奥の手を使ったんだと思うのだが……なぜ、元聖女がアンデッド化の魔法が使えるんだ?
いつ覚えた?
そんな疑問が浮かび、頭の中でグルグルと巡っている。
ソフィーの肌が浅黒くなっていく。小麦のような黄金色だった髪は、白くなった。羽は生えてないが、体内の魔力は爆発的に上がっていき、コレットの時とは違って上位のアンデッドに変化しているとわかる。
すでに魔法が効果を発揮して体に変化が発生しているので、『ディスペルマジック』を使ったとしても、アンデッド化は阻止できないだろう。
俺は不可逆の変異を眺めているしかできない。
「元聖女のアンデッドが誕生したのよ! 最高ねっ!!」
槍を持ちながらカーリンは笑っていた。恨みや怒りといった感情はわき上がらない。無力感を覚え、立ち尽くしている。
ソフィーと一緒に、人間として田舎の村でゆっくりと過ごす。そんな夢は儚く消えた。もう二度と叶うことはないだろう。
「魔物が嫌いなラルスちゃんはどうする? 人類の敵として処分するのかしら!?」
魔物になったとしても、ソフィーだったという事実は変わらないし、この手で殺すなんてできない。もしヤンを破壊しようとしても、俺は殺すなんて決断は下せないだろう。
「うるさいですね。少し黙ってもらえませんか?」
魔力がたっぷりと含んだ声だ。ビリビリと強い力を感じる。カーリンは口を開けたまま止まっていた。あまりにも不自然な動きだ。恐らくだが、ソフィーの言葉だけで強制的に命令を聞かせたようである。
ダンジョンマスターに対して、圧倒的な力の差を見せるとは。
種族はわからないが、ソフィーは強力な力を手に入れたようだ。
「私のラルスさんを狙う女は、種族関係なく死んでもらいます」
あんな過激な発言を、今までのソフィーはしなかった。
やはり、アンデッドになって中身が変わってしまったようだ。
動けないカーリンに近づいたソフィーは、左胸に手を置く。
「貴方の力、魂、全てもらいます」
「シェムハザと同じ力を持っているのかしら?」
「あんな下品な物ではありませんよ」
ダンジョンマスターとしての意地なのかわからんが、カーリンが見えない拘束から抜け出したようで、一方後ろに下がって槍を突き出そうとする。
「なっ!」
それをソフィーは、素手で受け止めたのだ。
強力なアンデッドになったからと言って、そんなこと普通はできない。
「あなた、何者?」
驚き、素がでたのか、カーリンは感情のこもらない声で聞いた。
「元聖女で、ラルスさんの妻、そしてダンジョンマスターになる女ですよ」
今までに感じたことのない強気な声だ。今まで溜めていた感情が乗っているような気もした。
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