第734話私に勝てると思っているの?

「……失礼した。その、ラルスという男が勝てば、我々はどうなるんだ?」

「私は消滅して、ダンジョンの多くは彼のものになるわ」

「ダンジョンマスターを倒せばダンジョンの全てが手に入る……」


先ほどからカーリンと話しているフリード王がつぶやくと、画面に映る人たちがざわついた。


俺が勝っててば世界を支配できる力が手に入るからだ。

恐怖と欲望が入り交じった瞳が俺に集中する。


「先ずはカーリンを倒さなければいけません」


ソフィーが俺を守るように前に立ち、カーリンを指さした。

勝った後のことなんて今考えることではない。まずは目の前の脅威、ダンジョンマスターを倒してからだと、みんなに気づきを与えてくれたようだ。


ようやく人類側の意思が統一されつつある。


「私に勝てると思っているの?」

「もちろんです。そのために来ましたから」


時間切れだな。リカルダやアルマは間に合わなかったか。聖剣を創造して『エンチャントウェポン』をかけると、ソフィーも『ホーリーブレス』を使い、さらに刀身に魔力を注いでくれる。その間に俺は、体内の魔力を循環させて身体能力を強化した。


「準備はできたかしら? そろそろ観客の前で最後の戦いをしましょ」


カーリンの狙いはソフィーの死による、人類の絶望。俺を即座に殺すことはないだろうと思い、胸に向けて聖剣を突き出す。


「なっ!」


なんと刀身を手で掴まれてしまい、動きを止められてしまった。俺の頭上に熱気を感じたので、手を離して後ろに跳ぶ。先ほどまでいた場所に、火球が落ちて床の一部が蒸発した。


なんて威力だ。『魔法障壁』を使っても防ぎきれないだろう。


もう一度、聖剣を創造しているとカーリンの姿が消える。背後から気配を感じたので、半回転しながら聖剣を横に振るうと、『魔法障壁』に接触して止まる。力を込めるが破壊できない。


「良い反応ね」


油断しているのか、立ち止まったまま話しかけてきた。


『フォース』


神の眼が出現して、威圧によりカーリンが膝をつく。動きが止まった。

このチャンスを活かすぞ!


『お前を神敵として認める。即刻、消滅せよ!』


聖剣の力を解放するワードを唱えた。刀身から虹色の光りが飛び出し、カーリンを飲み込む。フィネの本体を消滅寸前まで追い込んだ力だ。アンデッドではないが、ダメージは与えられるはず!


「これが聖なる力……!」


画面に映っている男が感嘆の声を上げた。あれはノア枢機卿だ。俺は見慣れてしまったんだが、彼らはこれが初見か。お前たちが崇拝している創造神の力が、カーリンに通用するよう、祈っておいてくれよ。

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