第732話こんなこともできるのよ
「やっぱり断るのね」
失望したなんて言いたそうな声を出すと、カーリンの隣に映像が浮かんだ。
リカルダたちが大量の悪魔と戦っているようだ。
「これは、ダンジョン内の映像を出す機能なのよね。通信までできるから結構便利で、よく使っているの」
助けは来ないと言いたいのかと思ったのだが、どうやらダンジョンの機能を説明してくれるようである。親切な悪魔だ。
時間が稼げるのであれば、戯れ言にでも付き合う覚悟があるので、黙って聞くことにする。
「で、ここが重要なんだけど。私が管理をしているダンジョンが、墓地の周辺だけだと思う?」
見た目だけで墓地エリアに入るまでがダンジョンだと思っていたのだが、実はもっと広範囲だったのか!?
周辺が墓地になっているのは、人類を騙すためにわかりやすい境界線を作っていたら?
もしそうだっただったら、想像している以上にダンジョンは大きい可能性が出てきた。
「他のダンジョンマスターと違って、私たちは気づかれないようにダンジョンを拡大していたのよ。しかも、手に入れたダンジョン全てを」
ヤンに突如としてカーリンやフィネが出現した理由がこれか!
ダンジョンがどこまで大きくなっているのか、もう想像がつかない。
「だからね。こんなこともできるのよ」
カーリンの周囲に映像がいくつも浮かんだ。その中にはゼルマや枢機卿たちも含まれていて、エルラー家の領地までダンジョンの影響範囲が広がっているとわかった。
「あれはロンダルト王国の国王陛下ですね。隣にいるのは、プロイセン王国の貴族です。他にも各国の貴族や国王もいます……」
ソフィーは聖女として各国で活躍していたので、俺よりも貴族たちの顔を知っている。言っていることに間違いはないだろう。もう世界のほとんどを支配しているんじゃないか?
「それでは皆で楽しみましょ」
映像から何十人もの声が聞こえるようになった。詳細は聞き取れないが、「何が起こっている」みたいな反応をしているみたいだ。
「私は、ダンジョンマスターの集合体であるカーリン!」
両手を挙げて宣言すると、映像に映った人々がピタリと止まった。
話を聞いて時間を稼ぐか、それとも攻撃をしかけて黙らせるか悩んでしまい、動けない。
「私を倒しに勇者ラルスと元聖女であるソフィーが目の前にいるわ。二人が勝てば世界は平和になるけど、負ければ私が人類を終わらせてあげる」
「人類を終わらせる? そんなこと、お前にできるのか?」
気持ちよく宣言していたカーリンにロンダルトの国王が質問した。
疑問に思う気持ちはわかるが、最悪の行動をしやがったな……。
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