第731話別の方法とはなんですか?

「貴方は最後に、ラルスさんを多くの人が見る前で殺すつもりなんですね」

「正解よ」


パチパチと音を鳴らしてカーリンが拍手した。


「私を殺したことにして、ラルスちゃんがヤンのダンジョンマスターとして振る舞うの。その間、裏でダンジョンマスターを殺し回って、人間社会を荒らすように誘導。人類がラルスちゃんにすがったところで、私が殺す……なんてことも案を考えていたんだけど、ソフィーちゃんに見破られたから、変えることにするわ」


行動が読まれたからってくだらない理由で、別の計画にしたようだ。気まぐれだな。悪魔らしいというか、少し子供っぽい感じもする。フィネの人格が影響しているのだろうか。


「別の方法とはなんですか?」

「ソフィーちゃんをアンデッドにして世界を蹂躙するコースよ! ラルスちゃんが必死に戦って勝つんだけど、その後に私が殺して世界が絶望する。そんな結果も最高よね!!」


俺からすれば最初の案と変わらないのだが、どうやらカーリンは違うようだ。


自分の考えた計画に酔っているのか、頬を赤らめながら息が荒くなっている。その隙に『ホーリーブレス』をかけてもらい、持っている聖剣に『エンチャントウエポン』を使う。


準備が整ったので構えようとしていたのだが、カーリンの姿が消えて見失ってしまう。


神経を集中させて空間に魔力の揺らぎを感じる。

転移先はソフィーの頭上だ!


魔力で身体能力を強化してソフィーに駆け寄り、立ち止まることなく抱きしめてから、その場を離れる。振り返ると、槍で地面を突き刺しているカーリンの姿があった。


「あら、殺せたと思ったのに。残念ね」


余裕がありそうな発言だ。

本体の力を持ってすれば、俺やソフィーなんて敵ではないのだろう。油断しているな。


このまま時間をかせいで、リカルダたちと合――。


目の前に呪われた槍の矛が迫っていたので、聖剣で弾き飛ばす。体を横に回転させてカーリンの頭をたたき割ろうとしたのだが、バックステップで回避されてしまう。再び槍を突きだそうとしたカーリンに向けて、数十の『ホーリージャベリン』が殺到。いくつかは直撃して体に穴が空いた。


「やるわね」


アンデッドではないので効果は減少しているが、それでも俺たちから距離を取らせるほどの脅威度はあったようだ。


「早く殺したいから、ラルスちゃん。どいてくれない?」


お前の言うことなんて聞くわけないだろ。


マナポーションを飲んで回復しているソフィーの前に立って、拒否する意思を伝えた。俺からは動かない。このままにらみ合いになってくれると良いのだが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る