第730話何が狙いだ? もったいぶらずに言え
たった二人でダンジョンマスターに勝てるとは思えない。他の場所に飛ばされた人たちが来てくれると信じて、時間を稼ぐことにした。
「いいだろう。お前の話に乗ってやる」
「素直な男の子って素敵よ」
いつものクセなのか、腕を組んで胸をアピールしようとしたが前の体より小さいため、アピールは失敗したようだ。魔眼もなくなったので洗脳される心配はない。人を惑わすという能力においては、弱体化しているのかもしれないな。
「私と手を組まない?」
話題の一つとしてあり得ると思っていた。
驚きはしない。
「何が狙いだ? もったいぶらずに言え」
「せっかちな性格は嫌われるわよ」
「お前に嫌われても気にしない」
小さくため息をついたカーリンだが、文句を言うことはなかった。瞳の色が点滅しているので、人格が入れ替わる、もしくは融合して統合精神としてのフィネに変わるのも時間の問題かもしれないな。
「私はね。人間が絶望するところが見たいの」
「それは知っている」
だから安定していた世界を乱し、国内外で争いが起こるようにしたんだろ。
ダンジョンマスターを殺し回っているのだって、魔物の世界の秩序が乱れることで、人間世界にも影響を与えたいから。そういった行動原理のもと、動いているのだと思っている。
「じゃぁ、絶望が大きくなる方法は?」
「……知らない」
カーリンは、口が裂けるほどの笑顔になった。歓迎できない話が出てくることだろうことは、容易に想像がつく。
「希望を失った時よ。生き残れるかもしれない、もしかしたら勝てるかもしれない、そんな淡い希望を見た後に失うと、一歩も動けなくなるものよ」
最悪な思考をしていると思っていたが、想像していた以上だな。どうやったら人間を苦しめられるかと、ずっと考えていなければ出てこない発想だぞ。
「で、どうやって希望をつくり、壊すつもりなんだ?」
恐らく本音であろう狙いはわかった。
重要なのは、カーリンの考える希望というやつだ。それがわかれば妨害しやすくなるだろう。
「ラルス。あなたよ。人類の希望となって、その後、こちら側に付かない?」
はぁ? 俺が人類の希望になるだと?
こいつは人間のことをなにもわかっていない。俺を過大評価しすぎだろう。一応それなりに戦えるとは思っているが、知名度や実力、権力、その他諸々が圧倒的に足りない。
「……なるほど、そういうことですか」
驚いて疑問ばかり浮かんでいる俺とは違って、ソフィーは納得したような顔をしていた。
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