第726話死ねぇ!

「ゴフッ」


カーリンは口から血を吐き出した。刀身を握って胸に刺さった剣を抜こうとするが、びくともしない。力は完全にワインドのほうが上回っているようだ。


動きが止まっているチャンスを逃すほど、俺たちは間抜けじゃない。


アルマはエヴァにトドメを刺すのを中断して、大剣を担いで走り出す。俺も聖剣を創造して後に続く。ソフィーとエレノア、ローザはマナポーションを飲んで魔力を回復させて、追撃の準備をする。


「我が主に――ゴファ!」


カーリンは腰をひねると、勝利を確信して油断していたワインドの口に手を突っ込む。次の瞬間、爆発。頭部が吹き飛んでワインドは剣から手を離し、仰向けに倒れる。もちろん、高火力の爆発に巻き込まれたカーリンだって無事ではない。上半身の半分が消し炭になっていた。


「死ねぇ!」


大剣を振り下ろそうとするアルマの前に、レッサーデーモンが出現すると抱きつく。動きがとれなくなったので、わずかに遅れて動いた俺が、聖剣で突き刺そうとする。


『魔法障壁』


透明な壁に衝突した。身体能力をさらに強化して力を込める。パリっと音が鳴ってひびが入り、数秒後には『魔法障壁』を破壊した。


「やるわねぇ」


聖剣の刀身がカーリンの胸に突き刺さる。やけどで爛れた顔が近づいてきた。


「私の体はここまでのようだけど、野望は続くわ。あなたが絶望する瞬間を見せてね」


聖女コンビの放った白い槍がカーリンの体に次々と突き刺さる。魔力が切れているのか自己回復はできないようで、全身に穴が空いて血が流れ落ちる。


世界を混乱させようとしたカーリンの目が閉じて、力尽きた。


「倒せたのか……?」


と、思えたのもつかの間。リカルダの放心している姿が視界に入る。ワインドが死んで驚いているのか、それとも悲しんでいるのか表情からは読み取れない。


フィネはリカルダから離れると、俺の所にまで一直線に進んでくる。アルマが間に立って大剣を横にして突進を受け止めようとしたが、逆に吹き飛ばされてしまう。魔力を回復させたローザの『エネルギージャベリン』は『魔法障壁』によって弾かれてしまいダメージは与えられない。


勢いは落ちないまま突っ込んできたので、カーリンから離れて攻撃の準備をするが、俺の所にまでは来なかった。


カーリンを抱きしめると、フィネは静かにつぶやく。


「私をぐちゃぐちゃにしておいて、先に死ぬとは。約束通り喰らってやる」


一時的に理性を取り戻したのか、フィネにしては、まともな発言だ。


足下から魔方陣が浮かび上がってフィネの姿が消えていく。攻撃しようと一足で近づき、聖剣を振るったが遅かった。転移で逃げられてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る