第720話二人とも頼めるか?

「次は醜い肉片を消すか」


火球によって右腕が焼けただれているのだが、気にはしてないようだ。リカルダから冷気が発生し、周囲の気温が下がっていく。


ドラゴンは寒さに弱いと聞いていたが、配下の魔物は元気に動き回っている。仲間には効果を及ぼさないなんて、ずるい効果があるのだろう。


「何をしているんだ?」


後ろを向くとアルマがいた。ソフィーやエレノア、ローザもいる。どうやら偵察に時間をかけすぎてしまったようで、様子を見に来たようだな。


「リカルダがカーリンの依り代を破壊したところだ。これから肉片になったベルハルクを処分するらしい」

「ほぅ。あの気持ち悪い権能をなんとかできるのか? 見物だな」


ソフィーから不死のギフトについて聞いていたのだろう。アルマは腕を組んで楽しそうに戦闘を見ている。お互いに潰し合ってくれるのであれば俺も歓迎なので、今は黙って見ていよう。


魔物たちの口から白い息がでるようになった。


ベルハルクの肉片の動きが鈍くなり、リカルダが尻尾を振り下ろして叩くと、粉々に砕ける。


「細かくなっても動くか」


肉片とも言えないほど小さく分解されたのに、ベルハルクは生きているようだ。恐ろしいほどの生命力。ダンジョンマスターとはいえ、倒しきるのは不可能じゃないか。


「そこで見ているんだろ? アンデッドが消滅する魔法を使え」


見学していたことには気づかれていたようで、リカルダは俺を見ていた。


「不死のギフトがあるから、聖魔法を使っても殺せないぞ?」

「いや、そんなことはない。ここまで小さくしたのだから、再生する前に消滅するだろう」


不死のギフトが発動しても消滅する速度のほうが速ければ、魔法は有効か。魔物のくせに頭が回る。挑戦する価値はありそうな話だ。


「二人とも頼めるか?」


ソフィーとエレノアの魔力が高まる。

持っている武器を前に出すと魔法が発動された。


『ターンアンデッド』


白い光りが部屋を包んだ。ベルハルクの肉片から白い煙が上がり、小さくなっていく。不死のギフトは発動しているだろうが、『ターンアンデッド』の効果の方が強い。


魔物たちが凍り付いた肉片を叩いて細かくしていることもあって、ベルハルクは何もできずに消滅してしまった。


あれだけ苦労した相手が、一瞬で倒せてしまうとは。


カーリンの依り代も破壊して側近も順調に倒せていることもあって、本当にフィネたちを倒せるんじゃないかという期待感が高まっていく。


柄にもなく、魔物に期待してしまっている自分がいた。

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