第717話リカルダの勢いは止められないみたいだな

アルマを先頭にして歩き出す。隣にはソフィー、中列にはエレノアとローザ、最後尾は俺だ。新しい魔物は出現していないので順調に行程を消化している。瓦礫の山を乗り越え、時には道を迂回しながら進むと、休憩を一度挟んだだけで目指していた塔に到着した。


「これは、すごいですわね」


塔の周囲にはドラゴンやリザードマン、ワイバーン、他にも見たことのない魔物の死体が山のように積み重なっていた。体からは血が流れ出ていて、あまり時間が経過していないとわかる。雑魚と戦ってもこうはならないので、フィネ側も特別な魔物を投入して戦わせたのだろう。


両陣営の戦力を順調に削いでいる。

偶然ではあるが、人類にとっては喜ばしい出来事。

意識しないと口角が上がってしまいそうだ。


「フィネ側の魔物は……あれか」


アルマが見つけたのは、体より顔の方が大きい体毛のない悪魔だった。他にも溶けかけている巨大な骨や半壊したミスリルゴーレムなどがある。


「複数の側近を投入しても、リカルダの勢いは止められないみたいだな」


フィネは急成長したと思ったのだが、長く生きたダンジョンマスターとの戦力差はここまであったのか。


正面から戦えば勝てないのはわかりきっていたから、カーリンは弱いダンジョンマスターの力を吸収して準備を進めていたんだな。


「味方が強いことは良いことでしょ。このままダンジョンを攻略してくれないかしら。リカルダがヤンのダンジョンも管理すれば、戦う必要はなくなるわよね。会談の場だってすぐに用意できるんじゃない?」


ローザの言葉は否定できない。

いくつかあり得る未来の一つではあるのだから。


「もしリカルダが負けてもフィネやカーリンは弱っているだろうから、交渉はし易いだろうな」


同意しつつアルマは俺のことを睨みつけていた。交渉なんてせずに殺せとでも言いたいのか? だったら、願いは同じだから協力してやれるぞ。


「こんなところで話してても結論は出ない。中に入ろう」


何か言いたそうだったソフィーやエレノアを置いて、俺は一人で塔の中に入ると『ライト』の魔法を使って周囲を照らす。外と違ってなにもない。だだっ広いフロアの中心に、二回へ進む階段だけがあった。


床には魔物の足跡がいくつもあるので、同じ場所を踏めば罠は回避できそうだ。


「ラルスさん、私はどんな判断をしても受け入れます。交渉せずに戦っても、ね」


状況を確認していたら、背後からソフィーに声をかけられた。


ずっと一緒に過ごしてきたからか、俺から漏れ出す殺意などで、フィネを殺そうとしていることに気づかれているようだ。それでも何も言わず、従ってくれるのは愛情からきているのだろう。俺にはもったいないと思えるほど、できた女性だ。

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