第715話地上よりかはマシだろう

無事に地下へ降り立つと、抱えていたソフィーとエレノアを降ろす。


ローザは地面に座って疲れを癒やしており、何事もなかったかのようにアルマは周辺に散らばるアンデッドやドラゴン等の死がいを調べていた。


生きている魔物はいない。リカルダの呼び寄せた魔物は、もっと奥に進んでいるのだろう。


「何か気になることでもあったか?」


スケルトンナイトの骨を持つアルマに聞いてみた。


「アンデッドの残骸が大量にあるだけだな。他の魔物が見つからない」

「それは、普通のことじゃないのか?」

「ここにはアンデッド以外の魔物が出現するんだぞ」


たしかにスライム系やロックワームなど、今までヤンのダンジョンでは見られなかった魔物がいたな。だが、穴の底にはアンデッドしかいない。リーザードマンや下級のドラゴンの死がいはあるが、これはリカルダの配下だろう。フィネが呼び寄せたわけではないはずだ。


どうして他の魔物がいないのか理由を考えてみたが、アンデッドのまき散らす呪いが閉鎖空間に溜まり続け、他の魔物が嫌がったのだろうという結論にたどり着く。


要は、廃墟都市の空気に適合できなかったのだ。


「他の魔物と戦う危険は少ない、か」

「思い込みは危険だが、地上よりかはマシだろう」


アンデッドしか出てこないのであれば、ソフィーやエレノアの力が最大限発揮される。攻略の難易度はぐっと下がるはずだ。


「では周辺をお掃除しましょうか」

「それはいいわね。休憩する前に魔力を使いますわ」


聖女コンビが、すたすたと歩いて廃墟都市の入り口に立つ。アルマが護衛として付いていったので、俺はローザを守るためにとどまると決めた。


「わたくしは左側、ソフィーは右側でよろしいかしら」

「はい。タイミングを合わせて使いましょう」


二人とも手に持っていた杖を前に掲げる。魔力が高まり魔法が発動された。


『『ターンアンデッド』』


廃墟都市の中心近くに、白い光の柱が二本立った。驚くべき速さで太くなり周囲を神聖な空気が包んでいく。


視界には映っていないが、アンデッドが溶けていることだろう。


この魔法はアンデッドを消滅させる効果しかなく土地の浄化はできない。よって呪いは維持されているので、アンデッド系以外の魔物が出現する可能性は低いままだ。


「あんたの新しい彼女、すごいわね」


新しいという部分を強調しやがって。相変わらずローザは嫌みなヤツだ。


「違うぞ。自慢の嫁たちだ」

「……言うようになったじゃない」


もう、昔の俺じゃないのだから当然だ。家を作ったとき、ソフィーとエレノアの二人を妻にして、一緒に暮らすと覚悟を決めたのだから。


「大切にしなさいよ」


それっきり、ローザは口を閉じて話さなくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る