第714話お前なら一人でも生きていけるだろ

三人分の体重が加わって前よりも落下速度は速い。地面に衝突すれば圧死するだろう。


『フォールコントロール』


魔法を使って落下速度を減少させた。流れる景色がゆっくりとなり話す余裕がでる。


「さっきのはヤバかったわね」


肩に乗せたローザはロックワームの群れを見ていたようで、顔が青ざめていた。アンデッド以外の魔物が大量に出現したことで、ダンジョンマスターであるフィネが新しい力を手に入れたと気づいたのだろ。


そういえば、ローザに他のダンジョンマスターの力を吸収して強くなったことを教えてなかったな。


「フィネも強くなっている、ということだ」

「勘弁してよ……」


げんなりとした声をだすと、ローザは全身の力を抜いた。

こいつやる気を失いやがったな……!

注意しようと思ったら、顔を上げたエレノアが空を指さす。


「ラルスさん、上を見てくださいまし」


のんびりとした警告だったので、魔物が襲ってきたわけではないだろう。何があったんだと気になって顔を上げた。


「受け止めろ」


金属鎧にメイスをもったアルマが俺に覆い被さった。


「ブヘッ」


顔にアルマの胸が当たった。柔らかい感触なんてなく、鎧が当たって鼻の骨が折れてしまう。ローザは俺の肩から落ちてしまって、叫びながら穴に落下していく。


……あいつも同じ魔法が使えるので死ぬことはないだろう。


ソフィーがこっそり『ヒール』を使ってくれなければ、着地するまで痛みに耐えなければいけないところだったぞ。


「私をのけ者にするなんて良い度胸だな」

「お前なら一人でも生きていけるだろ」

「ほう」


アルマからの圧力が高まった。

なんだよ。か弱い女性みたいな扱いをして欲しかったのか?

人類の中でも上位に位置するほど強いんだから、無理に決まってるじゃないか。


「私は聖女様をお守りする使命があるのだ。誘拐犯はこの場で処分するしかないな」


こいつ……! ダンジョン内だというのに俺への敵意をむき出しにしやがった!


ごそごそと移動してアルマの足が俺の首に絡みつく。股が顔に当たって前は見えない。なんというか良い匂いがするし、こいつも女性だったんだななんて感じてしまうから悔しい。


「ラルスさんはダメですよ!」


ソフィーが珍しく怒っていた。急にアルマが離れて視界が戻る。

どうやら下に落とされたようだ。今度はローザにしがみついている。一歩間違えれば死んでいただろうに。


「本当にむっつりなんですね」


俺の脇に抱えられているソフィーは笑顔で言ったが、さきほどのアルマよりも圧力があった。

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