第713話ラルスが娼館に誘われたんだけど……
アルマが先に行ってしまったので、ソフィーとエレノア、ローザの後ろを歩くことにした。
背後からの襲撃を気にしての隊列だなのだが、視界に映る聖女コンビが楽しそうに話しているので気になってしまい、集中できないでいる。
「伝説の存在とまで言われたダンジョンマスターと何度も出会うなんて、わたくしたちだけですわよね」
「ですね。最近は、ちょっとレアな魔物、なんて思うようになっちゃいました」
「向こうからやってくるですもの。その程度になるのが普通ですわ」
油断しているわけではないだろうが、リカルダの配下が魔物を手当たり次第に殺し回っているので、危険性が低く軽い口調だ。ずっと緊張しっぱなしというわけにはいかないので、今はこのぐらいの軽さがちょうど良いだろう。
「背後から視線を感じませんこと? ラルスがお尻を見ている気が……」
「エレノアさんもそうなんですね! 実は私も同じことを感じてました」
おい! なんてこと言いやがる! 二人が襲われないように後ろ姿を見ているだけで、決して性的な意味で見ているわけじゃないんだぞ! 勘違いされては困る!
「あいつ、むっつりだから仕方がないわよ」
「そうなんですか?」
「そうよ。ソフィーやエレノアの前じゃかっこつけているけど、女関係は全然ダメなんだから。私が知っている話を教えてあげようかしら?」
ローザまで参加しやがった。こいつは俺の過去を色々と知っているので、何を言ってくるのか予想ができない。背中から嫌な汗が流れてくる。
「お願いします!」
「私も聞きたいわ」
目をキラキラとさせたソフィーとエレノアがお願いすると、一瞬だけローザが俺を見た。ニヤリと、悪そうな笑みを浮かべてから話し出す。
「知ってる? 私たちと同じパーティーに入ったとき、ラルスが娼館に誘われたんだけど……」
あれはリヒトとの関係が良好だった頃、一度だけ娼館に行こうと誘われたときの話だ。コレットという彼女がいるから断っていたのだが、強引に店の中へ連れて行かれてしまい、一晩過ごしてしまった。手は出さなかったのだが、コレットには酷く怒られた記憶がある。
「でね。あとは酒場の娘の裸を見たときに――」
あの時も酷い目に合ったんだが、思い返してみれば楽しいと感じられるのだから不思議だ。懐かしいな。
俺の暴露話が止まらないから現実逃避しているわけはないぞ!
声を拾いたくないので無意識のうちに地面を見てしまった。ひび割れが見える。乾いた地面なら不思議ではないなんて考えいたら、急に縦に伸びて土が盛り上がる。
「下から敵だ!」
魔力で身体能力を強化してから走り出し、両脇にエレノアとソフィーを抱え、ローザを肩に乗せる。背後から大きな音が聞こえた。
アルマを追い抜いて大穴に飛び降りながら後ろを見ると、巨大なミミズ――ロックワームが数十匹も出現していた。
リカルダの配下たちは地下の敵は察知できなかったようで、大量の生き残りがいたようだ。
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今年も本作を読み続けていただきありがとうございました。
明日も更新する予定です。今後も楽しんでもらえると幸いです。
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