第709話カーリンに勝てると思うか?

パチパチパチと拍手する音が聞こえたので振り返ると、機嫌が良さそうに笑っているリカルダが見える。


「手際がいいな」


ストーンゴーレムを効率よく破壊しただけだというのに褒められてしまった。しかも心の底から喜んでいるようにも感じるから不思議だ。俺たちの力は、お前の命を刈り取るほど高いかもしれないんだぞ?


「ダンジョンの深層に行っても負けることはないだろう」


リカルダが断言したのであれば本当に行けるんだろうが、ダンジョンマスターに触れなかったのが気になる。


「カーリンに勝てると思うか?」


俺はゼルマとは違って交渉するつもりはないので、戦う前提で行動をするつもりである。現時点の戦力で勝負する土台に乗れているのか気になってしまい、質問をした。


「私がいるから負けることはない」


ドラゴンの尻尾をゆらゆらと左右に動かしながら、自信に溢れた言葉を放った。確かにリカルダと俺たちが連携できれば、カーリンには勝てるだろう。そのイメージは付く。


だが逆にリカルダ抜きであれば勝てないと、ヤツに宣言されたのは気に入らない。


「俺たちだけじゃ力不足だと?」

「不可能とは言わないが勝率は10%ぐらいだろうな」

「俺のギフト能力があっても?」

「ギフト能力がなければ0%だ」

「…………」


ソフィーやエレノアの聖魔法やローザの範囲魔法、アルマの接近戦の能力があっても、ダンジョンマスターには絶対に届かないと判断しているようだ。人間が束になっても勝てない相手。それがダンジョンマスターという存在であると、嫌でも感じさせられてしまった。


「おや、またお客さんが来たみたいだぞ」


ストーンゴーレムの次は大量のビッグモスキートだった。大きさは人間の赤ちゃんぐらいだろう。単体なら剣の一振りで殺せるほど弱いのだが、数が問題である。視界を埋め尽くすほど揃えられているので厄介だ。


ローザの範囲魔法だけでは殺しきれないだろう。聖剣もしくは炎の剣の力も必要になってくる。


急いで作戦を伝えようとしたら、リカルダが勝手に動いて前に出た。


「雑魚処理で我々の力を使う必要はない」


いつの間にか上空には大量のワイバーンや下級のドラゴンがいた。どんな方法を使ったのかわからないが、リカルダが呼び寄せたのだろう。


数百もいる下級ドラゴンが色とりどりのブレスを履き、生き残ったビッグモスキートをワイバーンが口を大きく開いて食べていく。


あれだけ大量にいた魔物は見ているだけで全滅してしまった。

なんともまぁ、豪快な倒し方である。

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