第708話数日で補充するのは大変だろうな

久々にヤンのダンジョンへ入ったが、ぱっと見るだけでは変わってないように感じる。


序盤の墓地エリアはスケルトンナイトやゴーストが出てくるだけである。聖女レベルの二人がいれば『ターンアンデッド』によって消滅させてしまうので、俺やローザ、アルマの出番なんて一切ない。


「楽でいいな」


後ろから付いてきているリカルダの機嫌は良さそうである。一瞬にして敵戦力を消滅させているからだ。いくらダンジョンが魔物を生産できるとはいえ、数百を消されたら損失の方が大きいのだろう。


「ダンジョンが一日に作れる魔物の数はどのぐらいなんだ?」

「それはダンジョンマスターの能力によって異なるし、魔物の種類によっても変わるから答えられん」


謎の多いダンジョンのシステムについて理解が深まった。

ダンジョンは魔物を作れるが、種類によって難易度が変わるようだな。強力な魔物ほど時間がかかるのであれば、フィネの側近が増えない理由にも納得できる。あとは平均的な生産能力が少しでもわかればいいのだが。


「だが、今滅ぼしたアンデッドを数日で補充するのは大変だろうな」


と、そんなことを考えていたら、リカルダの話で数百を一日で生産するのは難しいことがわかってしまった。敵が勝手に情報を提供してくれて笑いが止まらない。


このままソフィーとエレノアの力を使ってアンデッドを消滅させていけば、ヤンに魔物の大軍が殺到する危険は避けられるかもしれない。フィネだけならやれることは限られるので、力を削ぐという意味でも雑魚処理は有効だろう。


「また敵がきました。今度はストーンゴーレムです! 数は……いっぱい!」


聖魔法は偉大だなんて思っていたのが悪かったのか、ソフィーの緊張した声がここにまで届いた。


アンデッド以外の魔物が出てきやがったな。無機物と聖魔法の相性はよくない。俺たちの出番が来てしまったようだ。


「他のダンジョンマスターを殺して力を取り込めば、多種多様な魔物が生産できるようになる。敵はゴーレムだけじゃないだろうから気をつけろよ」


魔物であるリカルダに心配されながら俺とアルマが飛び出す。


最前列にいるストーンゴーレムに創造したメイスを叩きつける。一撃で上半身を破壊してしまうとボロボロと崩れ去った。瓦礫の中には小さな魔石が一つ見える。


「固さはそれほどでもない。足を止めておくから範囲魔法を頼んだ!」


数が多いときはローザの魔法がよく効く。発動までの時間を稼ぐために、高速で移動しながらメイスを振るって破壊する。少し息が上がってきたところで地面から魔力の動きを感じ、とっさに後ろに下がる。


地面が盛り上がって無数の槍が飛び出し、ストーンゴーレムを貫いた。見える範囲で動ける個体はいない。俺の期待通りに全滅させたようだ。

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