第706話人間ごときが! ダンジョンマスターを殺す、だと!?
「ラルスか。久しぶりだな」
機嫌は悪いようで眉を釣り上げながら俺の前に来る。
いつでも武器が創造できる準備をしながら様子を見ていた。
「お前こそ何でここにいる?」
リカルダから殺気のこもった魔力が漏れ出して俺を包み込む。答えを間違えたら即座に戦闘となるだろう。ソフィーたちも戦闘準備はできているから、すぐに殺されることはないが、フィネと戦う前に消耗してしまうのは避けたい。
最悪の未来を回避するべく、慎重に言葉を選びながら口を開く。
「フィネと戦いに来た」
どうやら正解を引いたらしく、リカルダは大きく口を開けて笑い出す。
感情の振り幅が大きいヤツだな。
「人間ごときが! ダンジョンマスターを殺す、だと!? できると思っているのか?」
「できる、できないじゃない。やるんだよ」
ダンジョンの奥底で寝ているのであれば許していたが、今のフィネはじっとしないだろう。少なくとも俺は地上で二回も遭遇、戦闘しているのだから。
野放しにしていれば何を起こすかわからない。さっさと処分するべきなのだ。俺の全てを賭けてでも。
「その目、いいな。やはりラルスは特別だ」
俺の顎を指で触り撫でてきたので、リカルダの手を叩く。
魔物に好かれることには慣れてしまったが、触れ合うつもりなんて一切ない。俺とリカルダたちは生物としてわかり合えないのだ。憎しみ、殺し合う関係でしかないのである。
「フィネの味方をするといたら殺すところだったが、敵対するのであれば私の仲間だ。一緒に同行してやろう」
「はぁ!?」
リカルダが俺のことを仲間だと言って、思わず言葉が漏れてしまった。
「なんだ不満なのか? こう見えても私は強いんだぞ」
腕を組み、尻尾で地面をドンドンと叩きながら不満そうな顔をしていた。
拗ねているのかよ。
ダンジョンマスターであるリカルダの力を疑うことはないが、問題は中身だ。仲間といっても敵対する者同士。どうやって信じ合えば良いんだよ。
「俺は人間で、お前は魔物だ。一緒に戦えるはずがないだろ」
「そんなことはない。お互いにフィネを殺したいと思っているからな」
「この前の復讐にでもしにきたのか?」
そういえばリカルダのダンジョンにフィネが攻め込み、派手な戦いをしていた。今度はリカルダが同じことをしようと考えても不思議ではない。
「違う。フィネを止めなければ、我々ダンジョンマスターの存在が危うくなるからだ」
「どういうことだ?」
スライムのダンジョンマスターなど、いくつか殺されている事例は聞いていたが、リカルダが危機感を抱くほどなのか。詳細が知りたいので疑問をぶつけた。
「世界各地でダンジョンマスターが殺されている。半数はヤられた。フィネ、そしてカーリンを殺すには充分な理由になるだろ?」
「……そうだな」
俺が平和な生活をしていた裏で、かなりのダンジョンマスターが殺されていたのか。ダンジョンの崩壊も進んでいるだろうし、世界中で経済的な混乱も起きていそうだ。
これもカーリンの狙い通りなのだろう。
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