第700話殺せ! 殺すんだ!

「魔王とは、魔物を統べる王という意味か?」

「あっているわよ。付け加えるのであれば、人間を滅ぼして魔物だけの世界になったら、正式に呼ばれるようになることぐらいかしら」


なんともまぁ、俺たちにとって最悪な未来を気軽に言いやがる。


過去に人類の危機と呼ばれる出来事は何回かあったが、全て乗り越えてきた。人類は弱くない。今回もまたカーリンとフィネの厄災を振り払ってやるからな。


「殺せ! 殺すんだ!」


カーリンと話している間に、外の騒ぎが大きくなった。


寝ていたソフィーやエレノアも起きたようだ。ドタドタと足音が聞こえて近づいてきているので、俺の様子を見に来ようとしているのだろう。


「そろそろ、お別れね」


目測でカーリンとの距離は一メートルもない。最速の一撃を放つべく右腕を前に出しながらバウルの使っていた短槍を創造した。


右手に現れると同時に強く握って、勢いよく腕を伸ばす。狙い違わず胸の中心を貫いた。


「ガハッ、ゴフッ」


まさか攻撃されるとは思っていなかったようで、カーリンは驚愕した目をしながら血を吐き出している。短槍を抜き取ろうとして柄を掴んできたので、ギフトの力を解除して短槍を消す。同時に、穴の空いた胸から血が吹き出した。


「やるわねぇ。ゼルマからの依頼は無視していいの?」

「さぁな」


曖昧に答えながら聖剣を創造した。


「ラルスさん!」


タイミング良く部屋のドアが開くと、ソフィーとエレノア、そして双子が入り、カーリンの姿を見て足を止める。


「すぐに処分するから少し待ってろ」


散々な目にあったんだから、さっさと頭を斬り落としてやる。


聖剣を横に振るおうとしたら部屋の壁が吹き飛んだので行動を中断。ソフィーたちの前に立つと『魔力障壁』を使って、飛んでくる木の破片を防いだ。


「みーーつけた!」


廃墟のようにボロボロになってしまった部屋へ入ってきたのは、フィネだった。中身も彼女のようで俺に対する憎しみは感じない。


空いた穴から外がチラッと見えた。火事になっているようで家がいくつか燃えており、地面には衛兵団と思われる男が数人、血を流して倒れている。


「随分と暴れたようだな」


今まで大人しくしていたのに何故、ヤンを攻めてきた?


俺と再会して頭がおかしくなったんだろうか。理由は分からないが危険な状況なのは変わらない。魔力で身体能力を強化するのと同時にソフィーの聖魔法『ホーリーブレス』をかけてもらった。


僅かな時間で準備が完了したのでフィネと戦おうとしたのだが、傷の塞がりかけたカーリンが間に立って邪魔をされてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る