第698話明日は買い出しをして、明後日には出発する予定だ
「それで今後の予定は決まってるのかしら?」
マントをハンガーにかけながらエレノアは話を続ける。
「今回の依頼はフィネとシェムハザが融合した、ヤンのダンジョンマスターと会談の場を作ることだ」
「フィネと会うんですね」
エレノアの眉間にシワが寄って、嫌悪感を露わにした。
聖女に相応しい女性になろうと日々、努力している彼女にしては珍しい。負の感情を見せるほどフィネのことを嫌悪しているんだろう。
「ヤツとは村で再会して戦ったんだが、最後は転移して消えた。恐らくヤンのダンジョンに戻っているはずだ」
「では、ラルスはヤンのダンジョンに行くのかしら」
「そのつもりだ。ソフィーも賛成だよな?」
双子の子供と一緒に、旅の道具を片付けていたソフィーの手を止めて俺を見た。
「もちろんです。何時、襲われるか分からない状況が続くぐらいなら、こちらから攻めに行きたいと思います」
フィネの不安定な状態を見てしまったので、何をしてくるか分からないという気がかりがある。別の場所に呼び出すこともできるだろうが、今回はその方法はとらない。こちらから攻めにいくという判断は正しい……と、少なくとも俺たちは思っている。
双子は、俺たちが何を話しているの分からず「また探索に行くの?」なんて、楽しそうに聞いていた。
「明日は買い出しをして、明後日には出発する予定だ。それでもエレノアは参加できるのか?」
「もちろんですわ」
教会の仕事をどうするのか気になるが、本人が大丈夫というのであれば信じるしかない。むしろ、この状況を利用して必要な道具を揃えるぐらいの強かさはあって良いだろう。
「聖水や教会が保存しているポーションは持ってこれるか?」
「ええ、他にも使えそうなものを用意いたします。期待してくださいまし」
教会が保管している貴重な武器や防具だろうか。どのようなものかは分からんが、アンデッドに効果を発揮してくれるのであれば使い用はある。
「期待させてもらう」
話が終わるとエレノアが食事の準備に入った。ソフィーは双子の面倒を見ているので、俺が手伝いをする。
とはいっても料理スキルなんてもってないから、指示に従って鍋に使う具材を切るぐらいしかできない。味の決め手となる香草や調味料の配分は、エレノアが決めて入れる。
二人で作ったこともあって、すぐに完成。久々に五人で晩ご飯を食べると、その日早めに寝ようとして部屋に戻る。
ドアをしめると『ライト』の魔法を使って室内を明るくした。
「お久しぶりね」
なんと、カーリンがベッドの上で足を組んで座っていたのだ。
「なぜ――」
声を上げようとしたら俺の唇にカーリンの指が当たった。
いつの間にか俺の前に立っていたようだ。油断したつもりはなかったのだが、姿を見失ってしまったらしい。俺の想像を超えるほど、実力の差はあるようだった。
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