第697話また難しい依頼をされたんですのね
その後もソフィー、ローザと談笑して夜遅くに寝た。
翌日にはエルラー家の屋敷を出ると、魔物に襲われながらもヤンに戻る。
時刻は夕方だ。俺が出発したときと変わらない。発展しつつあるが、のどかな印象も残している、成長途中の村だ。中に入れば住民は笑顔ばかり。世界中で危険なダンジョンマスターが暴れ回ってるなんて、誰も気づいていない。
「俺は、この平和を守るために戦う」
「私もですよ」
隣にいるソフィーは同意してくれたが、半歩後ろにいるローザは無言だった。まあ、こいつには期待していないから問題ないのだが。
ヤンを眺めながら我が家に入ると、エレノア達が出迎えてくれた。
「おかえりなさい」
俺の前に立って両手を出してくれたので、マントを脱いで渡す。
「ゼルマ様の依頼内容はどうしたの?」
「フィネやカーリンと話したいようで、会談のセッティングをしろとのことだった」
一緒に住んでいる家族みたいなものだし、隠す必要はないと判断して伝えた。
「まあ、また難しい依頼をされたんですのね」
「そうだな。だが、やれるのは俺しかいない」
ダンジョンマスターとコンタクト取れる人間なんて、世界中探しても俺ぐらいだろう。自惚れではなく事実だ。
カーリンが裏でダンジョンを破壊し回っているのであれば、中断してもらう必要がある。断れば戦いになるだろうから、仮に会談が実現しても気は抜けない。
「もちろんです。私のラルスでしかできない仕事ですわ」
にっこりと笑ってから、エレノアは話を続ける。
「ですから私もお手伝いしましょう。ゼルマ様の依頼、参加しますわよ」
聖女が俺の依頼を手伝うなんて教会は許さ――いや、違う。むしろ推奨するか。俺を教皇にしようと動くのであれば、一緒に動いて成果を上げたほうが都合はいいからな。
「教会の仕事はどうするんだ?」
「他のものに任せますわ。わたくしのお願いであれば、素直に聞いてくれると思いますわよ」
教皇や枢機卿の発言力が落ちている今、エレノアを抑えつけられる存在はいないからな。確かに止められる存在はいないだろう。
「死ぬかもしれないぞ?」
「あら、わたくしが、その程度の覚悟もないと思っていられるので?」
「すまん。失言だった」
死の覚悟なんて何度もしてきたエレノアに対する侮辱だったと思い、素直に謝った。
彼女もまた、ソフィーと同じく聖女に相応しい実力と覚悟をもった女性であるのは間違いないからな。依頼に付いてきてくれるというのであれば、心強いのは間違いない。是非、協力してもらおう。
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