第694話じゃあ、なんで依頼を受けたのよ

エルラー家が大切に保管していた武器をしっかりと観察してから、屋敷に戻った。


聖剣以外にも強力な武器を創造できるようになったのは、大きな収穫だろう。アンデッドではなくなったフィネに効果を発揮してくれるはずだ。


ゼルマに用意してもらった屋敷の一室にはソファーが一つしかないため、俺の左右にソフィーとローザが座っている。


今晩はここで過ごす予定だ。寝室は二つあって、男女に分かれて寝られる配慮はされていた。


「ねぇ、本当にダンジョンマスターと話し合いができると思っているの?」


不機嫌そうに行ったのはローザだ。ゼルマの依頼を受けた俺を、疑わしそうな目で見ている。


気持ちは分かる。普通は魔物とまともに話せるなんて思わないからな。


「無理だろ」


だから素直に、否定の言葉出た。


特にカーリンは隙を見せれば洗脳の魔眼で操ってくる可能性が高い。ダンジョンマスター側の動きを引き出そうとして、逆に俺たちの情報を渡してしまうパターンだってあり得るだろう。いや、それならまだマシだ。知らないうちに思考を誘導されてしまって、世界を破滅させる手助けをさせられてしまう恐れすらある。


それほど危険な存在なのだから、出会ったら即、攻撃、抹殺が妥当なのだ。


「じゃあ、なんで依頼を受けたのよ」

「ヤンが危ないかもしれないんだから仕方がないだろ」


エルラー家との関係があって、依頼を受けると決めただけじゃないのだ。


もしカーリンがヤンのダンジョンを暴走させようと考えていたら、近くにいる住民は全滅してしまうだろう。エレノアやソフィー、俺がいても結果は変わらない。多少、助けられる人間がいる程度だ。


第二の故郷となったヤンが危ないかもしれないと知って、何もせずに見過ごせるほど無情な人間ではない。


「ったく、アンタは甘過ぎなのよ」


何度言われても、こればっかりは直らない。

付き合わせるのは悪いとは思うが、諦めてくれ。


「私は、その甘さに救われたので好きです」


俺をフォローしてくれたソフィーは、そっと手を握ると頭を肩に乗せてきた。


既に同棲までしているので、この程度であれば問題はないだろうと思っていたのだが、ローザは違ったようだ。


「あんたたち、いつから人前でベタベタするようになったの?」


そういえばしばらく会っていなかったので、俺たちの関係が変わったことを知らなかったな。


「今やヤンで一緒に暮らしているし、普通だよ。普通」

「ふーーん」


なんだか含みのある返事をしやがったな。


嫉妬している……って事はないだろうが、何を考えているのか気になった。少し、確かめてみるか。

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