第691話武器か、ちょうどいいのがある
「今から紹介しよう」
ゼルマが手を叩くと、ドアが開いた。
俺を案内したメイドの後ろに見慣れた女が続く。
「なんだ、お前かよ……」
思わせぶりな態度から色々と期待していたんだが、結局いつものメンバーじゃないか……。腐れ縁もここまで続けば、前世に何らかの因縁があって、創造神が無理やり引き寄せているんじゃないかと、勘ぐってしまう。
ったく、そんなことならソフィーともっと仲良くなれるような、縁を作ってほしいものだ。
「強力といえば、確かに間違いありませんが……」
「何よ。文句でもあるの?」
腕を組んで奴隷らしくない姿を見せたのは、ローザだった。
広範囲、高威力の魔法が使えるので、強力な味方という表現に嘘偽りはない。が、俺は、アルマのように接近戦で戦える人材が来るかと思っていたので、少しガッカリしてしまったのだ。
「いや。お前の魔法には期待している」
短く返事て会話を打ち切ると、ゼルマを見る。
「他に援助はありますか?」
「ローザだけでは足りないと、言いたいのだな」
最悪、カーリンとフィネを相手しなければならないのだ。ローザだけじゃ負けは確定である。それはゼルマだって分かっているからこそ、俺の話を中断せずに聞いているのだろう。
「もちろんです。人だけじゃなく、武器も欲しいところですね」
「武器か、ちょうどいいのがある」
ゼルマがソファから立ち上がった。
「案内するから、お前の権能に加えてやれ」
部屋を出てしまったので、ソフィーと一緒に急いで後を追う。
長い廊下を歩いてから、階段を下る。一階では止まらずに地下へ進む。周囲の壁には魔方陣が描かれていて、何らかの防御機能がありそうだ。
「貴重な物を保管する場所に向かっていますね」
貴族との交流があり、色んなことを見てきたソフィーが断言するのであれば、間違いなさそうだ。
俺に家宝を見せるつもりかもしれんな。
長くクルトのダンジョンを抱えているエルラー家なら、王家に負けないほどの武器があるかもしれないと、期待値が上がっていく。
「ついたぞ」
ゼルマが立ち止まったので、俺たちも足を止めた。
振り返らず、解錠してからドアを開ける。
部屋の中が見えた。
なんとエルラー家の屋敷が半分ほど入るスペースのなかに、剣や槍、弓といった様々な武器や防具、さらには宝石や魔道書まで保管されていたのだ。
「すごいな」
「ええ。教会の宝物庫にも負けてません」
ソフィーからすれば、最大級の褒め言葉だろう。
「さすがに教会と比べれば見劣りするが、公爵家と比べられるほどだとは自負している」
ダンジョンから見つかった貴重な武具なんか、市場へ流れてしまう前に献上されることもあるだろうし、そういった物が自然と集まったのであれば納得の品揃えである。公爵家に負けないという発言は、嘘ではないだろう。
「貴重な物ばかりなので、譲ることも貸すこともできんが、好きなだけ見学してもいい。どうだ、魅力的な話だろ?」
俺の能力を知っているからこその提案であり、確かに素晴らしい話であった。
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