第689話他国が侵略戦争に負けている理由に使っているだけではないのでしょうか?

「国内ではそんな話を聞いてことがありません。他国が侵略戦争に負けている理由に使っているだけではないのでしょうか?」


ダンジョンから魔物が出ることは何度もあった。それは過去の歴史が証明しているので疑う余地はない。


しかし、それは人が訪れず放置されたダンジョンに限っての話であり、冒険者が訪れるようになれば、魔物が外に出る可能性がゼロになる。


各国のダンジョンが全て放置されているとは考えにくいので、俺は戦争といった国家案の争いに負けている言い訳として使っているんじゃないかと考えていた。


「残念ながら違う。魔物が町を壊滅させた目撃証言はいくつもあるぞ」

「もしそうだったとしても、ダンジョンから出てきたと限らないのでは?」

「疑いたくなる気持ちは分かるが、各国の冒険者が目撃している。さらに魔物を放出したダンジョンに入ると、魔物の数が激減していたことまで確認されているので、嘘の情報という可能性はない。私が話した内容は全て、事実である」


俺の考えたことなんて既に他のヤツらも思いついていたようで、事実確認はしっかり行われていたようだ。


非常に残念ではあるが、勘違いという線は消えてしまった。


「では、ダンジョンから魔物が出て暴れる事例や、ダンジョンそのものが崩壊する事例が出ているのでしょうか……って、まさかッ!」


思い出したのは、カーリンがスライム型のダンジョンマスターを弄んでいた事件だ。


あの時は炎の剣で倒したが、ダンジョンの全てを手に入れた感触はなかった。忙しくて忘れていたが、俺はダンジョンマスターになっていても不思議ではなかったのである。本来であればあり得ない出来事のはずなのだが……。


ダンジョンマスターを殺す前に、ダンジョンが崩壊していたら?


当然だが手に入れるべき力はない。


俺がダンジョンの力を手に入らなかった原因が判明したのと同時に、ゼルマの言っていた異変が大分前から発生していたことに気づく。


「ゼルマ様は裏でカーリンが暗躍していると考えているんですね?」

「そのとおりだ」


俺一人で答えにたどり着いたのが嬉しかったようで、ゼルマは野性的な笑みを浮かべながら肯定した。


隣に座るソフィーは驚きながらも、どこか納得したような表情をしている。

カーリンと話したことがあるなら、ある意味納得できる事態だからだ。


「カーリンは元々、フィネとつながりがある。彼女が生きているのであれば、我々が知らない情報を掴んでいても不思議ではないと思わないか?」

「確かに……」


人格は不安定になっていたが、ダンジョンマスターであることには変わらないので、カーリンと手を組んで動いていても不思議ではない。


ロンダルト王国だけ何も変化が起こっていないことからも、俺の予想は大きく外れていないだろう自信があった。



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