第681話お誘い嬉しい!
ソフィーの聖魔法の集中攻撃をくらえば、アンデッドなら跡形もなく消滅してしまう。それはフィネだって例外ではなかったのだが、ベルハルクは肉片が残るだけでなく、再生しようと動いていた。
不死のギフト。
種族が変わっても残っているのか。創造神から授かった力とも言われているので、アンデッドになったら消えてくれると期待していたんだがな。どうやら、ギフト能力は種族に関係なさそうだ。
「ベルハルクさんの魔力が尽きるまで、魔法を使い続けます?」
「いや、止めておこう」
再生しているが、動きはゆっくりだ。
すぐに戦線に復帰できるとは思えないので、放置しても良いだろう。
それよりも目の前にいるフィネを優先したい。
「配下は戦闘不能になった。次はお前の番だ」
切っ先を突きつけたら、恍惚とした表情を浮かべていた。
まったく理解が及ばない。ソフィーですら頬を引きつらせて引いているぐらいなのだから、誰が見ても同様の気持ちを抱くだろうな。
「お誘い嬉しい! 私と戦い――」
急に胸を押さえて苦しみ始めた。何が起こったんだと身構えていると、フィネは感情が抜けてしまったような表情に変わってしまう。
機嫌が悪くなったとは思えない。この反応はおそらく……。
「シェムハザに変わったのか?」
「……旦那様がラルスを助けろと言っている。それが許せないッ!」
最悪だ。俺の予想が当たってしまった。一つの体に、いったい何個の人格を持っているんだよ。
今まで以上に動きが予想できないぞ。
怒りながら、穂先を俺に向けてくる。
魂を取り込んだテッブスの反応が気にいらないようだが、人間が魔物を優先するなんてあり得ないので、当然の結果だと思うぞ。
「これからは肉弾戦になりそうだ。俺が前に出るから、サポートをお願いしたい」
「分かりました。気をつけてくださいね」
言い終わるのと同時にソフィーが聖魔法を使う。
『ホーリーブレス』
重ねがけされて効果が延長された。これで安心して戦える。
『エンチャント・ウェポン』
次は俺が魔法を使った。
刀身が薄らと光って、鋭さが上がる。
攻撃力は最大化できたはず。シェムハザが着ている鎧だって貫けるだろう。
「旦那様の愛は、私だけに向けばいい。邪魔者は殺すッ!!」
バカの一つ覚えのように突進をしてきたので、一歩横に移動して回避しながら、タイミングを合わせて剣を振り下ろす。太ももを斬り裂いて、片足が宙に舞った。
バランスを崩したシェムハザは地面に衝突すると、動きが止まる。
このチャンスを狙って剣を叩き込もうとしたのだが、足が動かない。視線を下に向けると、肉塊がブーツに絡みついていた。
くそッ! ベルハルクが邪魔しやがったようだ!
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