第678話ラルス、会いたかったぞ
「止めを刺すしかないだろ」
間が抜けた姿を見てやる気は削がれてしまったが、隙を見せているのでチャンスなのは変わらない。
今なら聖剣の一撃をぶつければ、簡単に倒せそうである。聖剣を創造して刀身に魔力を注いでもらおうとするが……少し遅かった。シェムハザの頭が、地面から出て立ち上がる。
ちッ。絶好のチャンスを逃してしまったか。
「ラルス、会いたかったぞ」
頭を打っておかしくなったのか、先ほどとテンションが全く違う。
落ち着いていているように見えるが、目がキラキラとしていて子供のような純真さがある。
クルトのダンジョンで出会ったときのように、シェムハザとフィネの魂が融合しているのは間違いなさそうであるが、前より不安定に見えるのは気のせいだろうか?
いや、今は余計なことを考える余裕はない。
どちらが体の主導権を持っているのか確認するべきだ。
「今のお前はどっちなんだ? シェムハザなのか、それともフィネなのか?」
「私はフィネではあるが、完全に昔のままとはいかんな。シェムハザの肉体から受ける影響もあって、愛するものへの執着が高まっ……ッ!!」
突撃してきそうだったので、けん制のために魔法を使う。
『エネルギーボルト』
光の矢を連続して放ち、シェムハザ……ではなく、フィネの体に当てる。予想通りダメージなんて与えられないが、動きを止めるのには充分である。意識が俺の方に向いている隙に、マルガレーテが両手剣を振り下ろした。
背後からの一撃だ。俺が注意を引いていたこともあって気づけなかったはずなんだが、頭に当たる直前、片手で止められてしまう。
「知らないメスだな。ラルスを狙っているのか?」
少し前のフィネなら他人に興味はなく、ゴミの様に扱い、常に俺だけを見ていた。
だが今は、俺とマルガレーテの関係が気になっているようだ。シェムハザの影響だろう。アイツは、愛しい旦那様に近づく存在に容赦はなかったからな。
前に会ったときより、人格の融合が進んでいる。
時間の経過と共にフィネでもシェムハザでもない、何かに変質しているのかもしれない。
「お前を殺すための仲間だよッ!!」
一足で近づいて、聖剣を横に振るう。『魔法障壁』によって止められてしまったので、身体能力をさらに強化する。
『ホーリーブレス』
ソフィーの補助魔法によって俺の力はさらに強くなり、フィネの『魔法障壁』にヒビが入る。
「うぉぉおおお!」
声を出しながら全力を出すと、パリンと乾いた音がしてフィネの体に刀身が食い込んだ。
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