第675話で、引き受けてくれるかい?
「そのレベルの冒険者がほぼ全滅、生き残りも正気を保てなかった……厄介ですね」
「危険性を共有できて嬉しいよ!」
軽い感じで言っているが、荒くれ者の冒険者を束ねる長として相応しい威厳は残っている。
追い詰められているというのに、絶望はしていない。芯のある女性だ。
「で、引き受けてくれるかい?」
「もちろんです。任せて下さい」
エルラー家からの指名なので断れない。であれば、即答してマルガレーテを安心させつつ、恩でも売るのがベストだと思っての反応だ。とはいえ、危険な依頼なのは変わらないので、情報収集ぐらいはしておきたいな。
「とはいえ、私は村の情報を一切持っていません。占拠された村に詳しい人に合わせてもらえませんか。偵察に適した場所や侵入経路を調べたいと思います」
「おお! それなら適任者がいるぞ」
言い終わるとマルガレーテは親指を立てると、自分の胸辺りに向けた。
「ギルト長が村に詳しいので?」
「生まれ故郷だからな」
なんと、占拠された村の出身だったのか!
それなら家族や友人がいたはずで、今すぐにでも助けに行きたいだろうに。
「じゃあ、俺が求めていることは分かりますよね?」
「もちろんだ」
表情からして良い話は聞けそうにないだろうが、続きを聞きたいので静かに待つ。
「村は平地のど真ん中にあるので、偵察には向いていない。草ぐらいしか生えてないので、近づけば必ず見つかるだろう」
夜なら姿は隠せるだろうが、明かりがないので村の様子は把握できないだろう。近づけば何か分かるかもしれないが、探知系の能力を持つ魔物だったら発見されてしまう危険の方が高い。
真っ暗闇の中で戦いたくないので、魔物にバレずに偵察はできないと諦めるしかないな。
「それと村の入り口は一つしかなく、周囲は木製の壁に覆われている。魔物の指示なのか分からないが、現在は2メートル近くもの高さがあって、中の様子を見ることすらできない状況だ」
クソッ! 要塞化してるじゃないか!
隠し通路なんてないだろうし、正面から入るしかなさそうだ。
言うまでもなく非常に危険である。
「教会の秘技に姿を隠す魔法なんて……」
「残念ですが、ありません」
「だよなぁ」
ソフィーに便利な魔法を知っていないか聞いてみたんだが、ばっさりと否定されてしまった。
「今回は私も参加するから、そう肩を落とすな」
一瞬聞き間違えかと思ったのだが、マルガレーテを見る限り本気のようだ。
誰にも話していなかったようで、部屋に控えている受付嬢は驚いていた。
「ポーションは十分に用意した。荷馬車だが足も用意している。いつでも行けるぞ」
準備が良すぎる。故郷を想う気持ちは分かるが、少し暴走している気もした。
しかし、ギルド長の戦闘能力は魅力的だ。少し不安ではあるが、人手が足りないので受け入れるしかないだろう。
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