第671話厄介なヤツが来たみたいな反応だったからな

仕事をするためソフィーと一緒に家を出た。


エレノアと双子は教会で働いているので、別行動である。


人が多くなったヤンのメインストリートを歩いて冒険者ギルドの中に入る。ドアを開けた瞬間、室内にいる冒険者たちの視線が俺に集中した。


騒がしいはずの室内がしんと静まっている。

俺が受付カウンターに向かって歩くと、人が離れていく。


理由は分からないが、どうやら触れてはいけない人間として認定されてしまっているようだ。邪魔したら殺されるとか思っているのかもしれん。


まったく、冒険者の中でも穏やかな性格をしているのに、どうしてこうなった?


背中を優しくさすって慰めてくれるソフィーの優しさが身にしみるな。


受付カウンターの一つが空いていので、椅子に座っている受付嬢に近づく。頬を引きつらせていた。こっちに来てしまったなんて思っていることが、顔にまで出ている。


「ギルド長に呼ばれたんだが、今から話せるか」

「は、はい! すぐに確認いたします」


慌てて椅子を立ち上がると、逃げるようにして二階へ行ってしまった。


しばらく待たなければならない。暇なので隣にいる受付嬢を見ると、前にロイの情報を流してくれた女性だった。


「久々だな。元気だったか?」

「はい。ラルスさんはどうでしたか?」

「俺も元気だな。五体満足で活動できている」


何度も死にそうな目に合ってきたが、ソフィーの力もあって身体に異常はない。動けなくなって引退する冒険者がいることも考慮すると、俺は恵まれている立場にいるんだなと思う。


「さすがですね」


暇だしちょうど良い機会なので、冒険者や他の受付嬢の様子がおかしいことを聞いてみるとしよう。


「なぁ、俺って冒険者たちに嫌われるようなことでもしたか?」

「え、そんなことはないですよ……て、ああ、彼らの様子がおかしいから気になってるんですね」

「そうだ。厄介なヤツが来たみたいな反応だったからな」

「厄介ですか、なるほど、ある意味あっているかもしれません」


どいうことだと思って、話の続きを待つ。


「エルラー家の新当主様と特別の仲にある。そんな噂が流れてるんですよ。機嫌を損ねたら首が飛ぶんじゃないかって、ヒヤヒヤしているんです」


特別というのは男女の関係をいっているのだろう。ゼルマの愛人だから、怖くて近寄れなかっただけなのか。


ソフィーやエレノアと同棲を始めたので、そのうち誤解は解けるだろうが、しばらくは腫れ物扱いをされるのを我慢するしかなさそうである。


「なるほどね。後で、その噂は嘘だって、さっきの子に言っておいてくれ」

「嘘なんですか?」

「もちろんだ。たまに指名依頼をもらうぐらいの関係でしかない」

「わかりました。その話、みんなにしておきますね」

「頼んだぞ」


言いながら銀貨を数枚握らせた。


住みにくくなるのは困るので、しっかりと働いてもらいたいからだ。地元のお友達とは末永く仲良くしたいものだ。

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