第667話雑魚のくせに邪魔するんじゃねぇ!
「お前、いいかげんにしろよ」
せっかくソフィーが怒りを収めてくれたというのに、台無しにするなよ。
やはり実力行使で黙らせるしかないか。ギフト能力でナックルを創って攻撃しようと考え、魔力を練る。
「ここは、俺が受け持つっす!」
なんとガンダルがごろつきに抱き付いて、動きを止めたのだ。
「てめぇ! 何をしやがる! 雑魚のくせに邪魔するんじゃねぇ!」
「雑魚なのは、相手の実力を見抜けないお前っす!」
ガンダルと初めて出会ったときのやりとりを思いだした。
実力差がわからずにケンカを売ってきたから返り討ちにして、教育したんだっけな。
あの時と比べて随分と成長したじゃないか。もう一人前として扱ってもいいだろう。
「大丈夫か?」
「あんなのに負けるほど弱くないっすよ!」
俺の問いに笑顔で答えた。
いつまでも保護者面するのは良くないし、男が任せろと言ったのであれば信じるだけである。俺はソフィーのことに集中しよう。
「バカは放置して教会に行く。それでいいよな?」
「……はい」
納得はしてなさそうだが、戦闘態勢は解いてくれたようだ。高まっていた魔力は収まって、通常モードになっている。
最後にガンダルを見て任せたとぞと伝えてから、ソフィーにしがみつかれたまま歩き出すと、教会に向かって進む。
普段なら無言でも気まずいってことはないのだが、今回はトラブルがあったばかりなので何か話したい。色々と悩んだが、彼女の変化について聞くことにした。
「最近、少し変わったか?」
怒りっぽくなったというか、感情的になったというか、そういった変化を感じている。もしかしたら今が本来の姿なのかもしれないが、確証はない。明確な答えが欲しかった。
「……ラルスさんはどう思いますか?」
質問で返されてしまった。試されているのだろう。別に悩むことではないので素直に答えることにする。
「今の方が、素の性格に近いのかも? なんて思っているし、そんなソフィーも素敵だ」
すべての枷が外れて残ったものが、本来ソフィーが持っている資質なのだ。違うと言って否定してはいけない。俺はありのまま受け入れると決めていた。
「ラルスさん……」
「自由に生きられるようになったんだ、周囲に気を使わず、思うがままに生きていこう」
「はい!」
先ほどまで怒っていたとは思えないほど、満面の笑みを浮かべたソフィーは元気よく返事をした。
感情が高まりすぎたのか、俺の腕から離れると体に抱き付く。
このまま歩けと言いたそうな目をしているのだが、さすがに歩きにくい。首と膝の裏に腕を回して抱っこした。
「ひゃい!?」
顔を赤くして恥ずかしがっているが、気にする必要はない。俺たちを抑えつけるような存在はいないのだからな。
俺はソフィーを抱っこしたいからしている。それでいいじゃないか。
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