第五十三話 【side陽菜】ホワイトデーもやっぱり乙女の戦場でした その二

 明日3月14日はホワイトデー。

 陸の妹の結衣ちゃんから、「お兄いからのお返し、今年は手作りクッキーですよ!」と先ほどタレコミがあった。確かに当日何かな何かなと、ドキドキしながら貰うよりも少し(表情だけでも)落ち着いて対処出来るのであたし的にはとても有難い。でも陸からの贈り物であれば何でも嬉しいけどね。


 それにしても今年は事前の根回しが大変だった。たぶん陸本人は知らないけど、実はクラスの女子や後輩たちからも陸は意外と人気がある。


「学校一の美少女(あたしはそう思わないけど)と評判の陽菜と普通に付き合っている=かなり将来性がある男」と皆が勘違いしているのだ。モテる男はさらにモテるという好循環なのらしい。この状況はあたしにとって非常に不都合な状況であるため、事前にネゴして陸に義理(もちろん本命も阻止した)チョコを配るのを自発的にやめてもらった。


「陽菜の笑顔が般若はんにゃに見える……」と友人たちから涙目で怖がられたが、これに関しては絶対に、絶対に妥協はしない。そう、あたしの大事な旦那様(?)を泥棒猫にかっさらわれる訳にはいかないのだ。それでも何人かあたしの情報網から漏れた数匹の泥棒猫たちが陸にアプローチをかけたのだが、これは陸本人が「陽菜に悪いので……」と全て断ってくれた。


 本当にあたしには勿体ないぐらい素敵な彼氏だわ♥♥♥

 但し例外はある。


 先ずそば打ち体験で変わり種蕎麦メニューの試食を手伝った洋和女子大生の島さん。女子大生に褒められて陸は鼻の下を伸ばしてたっけ。島さんからは直接義理チョコを貰えたようだが、まぁ、島さんは大学生の彼氏がいるから大丈夫かな。


 次に『Shiba-Inu(シバイヌ)』編集部の高野美咲さん。取材で何度かお世話になった御礼ということで、バレンタインデー当日必着で義理なのか本命なのか微妙なチョコが送られてきた。うーーーん、まぁ彼女も四捨五入すればアラサーだからたぶん大丈夫……かな?


 今日は学校から帰宅後、何食わぬ顔で陸と恋人繋ぎしながら、もものお散歩中。ももはいつも通り巻き尾をフリフリしながら、ハァハァ舌を出してとても嬉しそうだ。


「なぁ、陽菜。明日はうちで晩御飯を一緒に食べないか」

「明日は……うん、特に用事も無いから一緒に食べようか。陸は何か食べたいものはある?」


 陸がわざとらしく誘ってきたので、あたしは本当の目的に気づかない振りをしながら了承する。


「そうだな。陽菜が作ってくれるのなら何でも美味しいしなぁ」

「うふふ、ありがと。それじゃあ陸の大好きな和食を作ろうかな♥」


 陸が嬉しそうな笑顔になる。それを見たあたしも幸せ一杯。

 あー、明日のホワイトデーが今から楽しみだわ。

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うちのもふもふが恋のキューピットだった件 あっくん @attsukun20010507

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