第四十七話 クリスマスがやって来た! その五
新田家でのクリスマスパーティーは盛り上がり、お父さんと陽菜パパは既に酔っぱらい状態。お母さんと陽菜ママはワインを飲みながら高校時代の昔話で盛り上がっている。ちなみに結衣ちゃんは……当然の結果としてお腹いっぱいバタンキューだ。
「陽菜、酔っぱらいはほっといてベランダに出ないか」
「うん、そうだね」
陸くんと陽菜がベランダに出るタイミングで、あたいは分身と透明化スキルを使ってこっそり一緒にベランダへ出る。今は分身のあたいがサークル内でスヤスヤお寝んね中だ。
「今年のクリスマスパーティーは楽しかったね」
「あぁ、陽菜の手料理も最高だったよ」
クリスマス(の恋人たち)を意識した服装の二人が夜景を眺めながら話し始める。今日は寒いので二人が吐く息も真っ白だった。さぁ、陸くん、いよいよ勝負の時だよ!
まずは陸くんからプレゼントを渡すらしい。ちょっとだけ緊張しながら陽菜に長方形の箱が入った綺麗なラッピング袋を手渡す。
「陽菜、開けてごらん」
「うん……わぁー、すごーい‼」
陸くんからのプレゼントを開けた陽菜が驚きの声を上げる。陽菜へのクリスマスプレゼントは陽菜の誕生月である2月の誕生石『アメジスト』と、天然ダイヤが付いているハート型をモチーフにしたネックレスだ。
「ね、ねえっ、これってあたしの誕生石?」
「うん、陽菜の(誕生月である2月の)誕生石のアメジストだよ」
「綺麗な紫色だぁ……それにダイヤも付いてる。陸、本当に素敵なプレゼントをありがとう! じ、じゃあさ、あ、あたしの首にこのネックレスをつけてくれない?」
そう言って陽菜は顔を赤くしながらくるりと半回転すると、陸くんへ自分のうなじを見せる。
「こ、こうかな?」
陸くんが少し震える手でプレゼントのネックレスを陽菜の首につける。
「に、似合うかな?」
「いつもより大人びて見える。とっても可愛いよ」
「大事にするね。じゃあ、あ、あたしからも陸にプレゼント!」
陽菜がそう言って綺麗にラッピングされた袋を陸くんに手渡す。
「どれどれ……おおっ‼」
陽菜からのプレゼントはなんと手編みのマフラーだった。
「慣れていないから結構恥ずかしい出来なんだよ……」
いやいや、陽菜、あんた、どんだけ女子力高いのよ! って言いたくなる、それは見事な出来のマフラーだった。うん、柴犬だけど寒がりのあたいの首に巻いて欲しいぐらいだよ。
「じゃあさっそく巻いてみようかな」
陸くんが嬉しそうに手編みのマフラーを首に巻く。
「うん、あったかい。それに手編みだから陽菜の匂いがするな……」
「もうやめてよ! 恥ずかしい……」
そういう陽菜の顔は真っ赤っかだ。
◆◆◆
「今年も色々あったなぁ」
「そうだね。あたしたちが付き合い始めてから、もう一年以上経ったんだよね……」
陽菜が感慨深げにつぶやく。
「あっ、雪だ!」
「てっきり食欲が無い結衣ちゃんへの冗談かと思っていたけど、まさか本当に降ってくるなんて……素敵なホワイトクリスマスになったね」
嬉しそうな表情で陽菜が笑う。そんな笑顔を見て、急に陸くんが陽菜を抱きしめる。
「えっ⁉ り……く……んっ」
急に抱きしめられてビックリした陽菜の声が途中で止まる。あたいが見上げると陸くんが陽菜の唇に自分の唇を重ねていた。二人とも時間が静止したかのようにそのままピクリとも動かない。しばらくしてから陸くんが唇を離す。
「ごめん……陽菜があまりに可愛くて……つい我慢できなくなったんだ……」
「ううん、謝らないで。今日こそ陸とキスしたいってあたしも期待していたんだから……ふふふ、幼馴染同士のファーストキスだね」
「あぁ……」
二人はお互いの目を見つめあいながら、再度口づけを交わす。今度は今まで降り積もってきた想いを相手に伝えるような優しいキスだ。あわわわ、陸くんと陽菜が今まさに大人の階段を上っているよ‼
「うふふっ、陸サンタさん、素敵なプレゼントをありがと。今日はあたし眠れないかも……」
「それは俺もだよ、陽菜サンタさん」
「陸! 陽菜ちゃん、雪が降ってきたからそろそろ中に入りなさい!」
タイミングを見計らったかのように陸くんのお母さんが二人に声をかける。
「そろそろ行こうか、陽菜」
「うんっ、陸」
二人が肩を寄せ合いながら戻るタイミングで、あたいも慌てて中に入る。こんな雪の中で締め出されたら、あたい凍死しちゃうよ!
部屋に戻った二人がニヤニヤする自分の母親たちに「「うふふ、早く孫の顔が見たいわ~」」と冷やかされたのは言うまでもない。
◆◆◆
その晩、寝床に入るといつものピコーン音が。
「おめでとうございます! あなたの善行レベルが一つ上がりました。さらにスキルに夢見が追加されます」
久しぶりに善行レベルが上がったよ! 今度は夢見……これって夢関係のスキルなのかな?
陸くん、今日は本当に頑張ったね。二人の仲が進展して、あたいも(恥ずかしいけど)すごく嬉しかったよ! 長かったクリスマスイヴの一日を終え、あたいはスヤスヤ気持ち良い眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます