第四十六話 クリスマスがやって来た! その四
「結衣サン〇さん、ありがとね!」
「ももトナ〇イちゃん、さよなら~♪」
「うむ。みな、気を付けて帰るのだぞ」
「アーオン(みんな、バイバイ‼)」
氏子集会所での楽しいクリ〇〇スの集いも終わり、結衣ちゃんと子供たち全員で後片付けした後、ヒメ神様から頂いたプレゼントを大事に抱えて手を振る子供たちとはヒメ神社でさよならした。あれっ、そういえば鹿ってお鼻が黒いから、わざわざトナ〇イの赤鼻にする意味無かったよね……。
『ももよ、お主は犬なのだからあまり細かいことを気にするでない。あくまでわらわのこだわりじゃ』
「――あれっ、私何してたんだっけ?」
ヒメ神様が神懸りを解除した途端、結衣ちゃんが夢から覚めたようにつぶやく。
『結衣、もも、今日はご苦労じゃったの。わらわもみなに喜んでもらえて満足じゃ』
御機嫌のヒメ神様が結衣ちゃんとあたいにお礼を言う。まぁ、結衣ちゃんにはヒメ神様のお声は聞こえていないけどね。
「うーん、何か美味しいものを食べた夢を見たような気がするんだけど……。まっ、いっか。もも、今夜は素敵なクリスマスパーティーだから早くお家に帰ろ!」
「ワン!」
結衣ちゃんとあたいはワクワクしながら自宅への帰路を急いだ。でも結衣ちゃん、お昼に(ヒメ神様が)チキンとケーキを結構食べていたから夜はセーブした方がいいよ……。
◆◆◆
そして夜七時。いよいよ新田家&大和田家合同のクリスマスパーティーがスタート。あたいはお昼抜きだったので、お腹ペコペコだよ。
飾り付けられたクリスマスツリーがきらきら光ってる。でもあたいは飾りのボールで遊びたくて仕方ないんだけど。
「みんなー! そろそろテーブルに集まってクリスマスディナーを頂きましょう」
陸くんのお母さんの呼びかけで全員がリビングのテーブルに集合。前菜の盛り合わせや七面鳥の丸焼き、大きなクリスマスケーキ、オニオングラタンスープなど、どれもみんな美味しそうだ。
「「「おーっ、どれも凄いな」」」
「そうでしょ、そうでしょ。陸くんのお母さんとママ、それに私の三人で作ったんだ~♪」
男性陣の声にふふんと勝ち誇ったような声で陽菜がそれぞれの料理を説明する。
「おっ、結衣。食いしん坊のお前がご馳走を前にして嬉しそうな表情をしないなんて本当に珍しいな。今夜は雪が降るかな?」
「おにいの馬鹿っ! お昼に夢の中で美味しいものを食べたせいか、なぜかお腹が一杯なんだよ……でも絶対全部食べるんだから!」
陸くんの冷やかしに妹の結衣ちゃんが反論する。うん、結衣ちゃん、それって夢じゃないからね。食いしん坊の結衣ちゃんのことだからきっとカロリー過多になるはずだけど……まぁ今日一日だけだから大丈夫だよね。
☆☆☆
「もも、今日はクリスマスのご馳走だよ!」
クリスマスとは別の意味で綺麗に着飾った陽菜があたいのご飯を用意してくれる。誕生日と同様、あたいには犬用クリスマスケーキ、大好物の鶏じゃが(塩分超控えめの玉ねぎ抜き)が用意されていた。鶏じゃがは最近花嫁修業中(?)の陽菜が作ってくれたみたい。
「ワォン(いただきまーす)」
お腹がグーグー鳴りそうなあたいは巻き尾の尻尾を扇風機みたいにブンブン振って最上級の喜びを表す。まずはクリスマスケーキから……上に載っているクリームを全て舐め終えた後、下部のスポンジをむしゃむしゃ。次に鶏じゃがの鶏モモ肉。
「あたしの作った鶏じゃが、美味しいかな?」
「アン(うん、とっても美味しいよ!)」
「陽菜の手作りご飯が美味しくて良かったな。ほら、ももへのプレゼントだよ」
あたいのクリスマスプレゼントは結構大きな袋に入っている。陽菜と同様、クリスマスとは別の意味で着飾った陸くんがゴソゴソと袋の中身を出してくれた。寒い季節に嬉しい暖かふわふわベッド、猫も犬も夢中になっちゃうちゅー〇の液状おやつ(とりささみ味)、それにあたいが好きすぎてすぐ壊しちゃう(ブーブー)おもちゃだ。
「アォーン(いつもありがとね‼)」
あたいはまた巻き尾の尻尾をブンブン振る。
「ももの尻尾は表現力豊かだな」
あたいの頭をなでなでしながら、陸くんはこの後に控えるメインイベントに緊張しているようだった。
そう、あたいだけは知っている。今日こそ陸くんが陽菜との関係を一歩先に進ませる覚悟をしていることを。陸くん、頑張ってね。二人の仲が進展するよう、あたいも応援しているよ!
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