第四十五話 クリスマスがやって来た! その三

 十二月二十四日、今日はいよいよクリスマスイヴ当日。

 結衣ちゃん(現在ヒメ神様が神懸り中)とあたいはお昼前にヒメ神社の氏子集会所へ向かった。カーネルサン〇―スのクリ〇〇スチキンと地元ケーキ店のクリ〇〇スケーキを子供たち全員に行き渡るよう朝一で購入してきたので、結衣ちゃんの両手もいっぱいの袋でふさがっている。


 あたいもお手伝いでクリ〇〇スチキンの袋を口にくわえているのだが、袋の中からフライドチキンの美味しそうな匂いが漂ってきて、さっきからジュルジュルとよだれが垂れまくっているのだ。ハッ、いけない、いけない……。袋の中によだれをこぼさないよう注意しないとね。


 子供たちへのプレゼントは昨日のうちに集会所へ運び込んだ。子供たちが何を欲しがっているのか、ヒメ神様は既にご存知なので、それぞれに合ったプレゼントを用意したらしい。うん、これはサンタクロースもビックリだね。


『ふふふ、わらわの用意したプレゼント、きっと皆喜ぶじゃろな』

「ヒメ神様、一体子供たちにどんなものを用意されたのですか?」

『うむ。神社でわらわに子供たちが真に願ったものをそれぞれ用意しておる』

 結衣ちゃん(ヒメ神様)が胸を張る。ヒメ神様によると、子供たちが欲しがったのは絵本やお人形、家族みんなで楽しめるボードゲームなどで、ゲーム機やアクセサリーなどは無かったそうだ。今時珍しく心根の優しい子供たちだわ。


◆◆◆


 ヒメ神社へ到着すると神社の宮司さんが事前に集会所の鍵を開けてくれていたので、そのまま中に入る。テーブルと座布団も準備してくれたようだ。


『そうそう、お主は座敷に上がるのだから綺麗に足を拭かないとな』

 そう言って結衣ちゃんがあたいの足をふきふきしてくれた。神様に足拭きされるあたいって……。本当におそれ多いです。


 ケーキを集会所に備え付けの冷蔵庫に入れると、あたいと結衣ちゃん(ヒメ神様)は初詣用の巫女衣装に着替えた。さらにサン〇クロース役の結衣ちゃんは紅白の帽子、あたいはトナ……じゃなく、鹿のツノ付きの被り物を着ける。最後にあたいのお鼻は黒いので、結衣ちゃんが赤色の紅を塗ってくれた。これでトナ……ではなく、鹿の代役の完成。人数分のコップと紙皿、フォークを用意したら、あとは子供たちの到着を待つだけだ。


◆◆◆


 お昼少し前、いつもヒメ神社の境内を遊び場にしている学童保育の小学生たちが集まってきた。告知方法が夢の中だけにみんな半信半疑の表情だね。


「昨日ゆめの中で今日のお昼、ヒメ神社にあつまるようにってヒメ神様からのお告げがあったの……」「あたしも!」「僕も!」

 どうやら子供たちの両親にも夢の中でお告げがあったらしく、特に疑問を抱くことなく子供たちを送り出してくれたらしい。さすがヒメ神様、抜かり無いです。


「ふぉっふぉっふぉっ、信仰心の厚い子供たちよ、よく来たの! 今日はみんなでクリ……げふんげふん、年末のお祝いをしようと思ってフライドチキンとケーキを用意したぞ」

「アオーン(あたいは鹿だよ)」

 サン〇の格好を真似た結衣ちゃん(ヒメ神様)とトナ○○の格好のあたいが子供たちに声をかけて集会場の中に入るよう促す。


「わあー、すごい!」

 氏子集会所のテーブルの上に置かれたクリ〇〇スケーキとチキンに子供たちが歓声を上げる。


「さぁ、召し上がれ」

「「「「「ヒメ神サン〇様、ありがとう! いただきまーす‼」」」」」

 みんなが着席すると年長の子が年少の子にケーキとチキンを取り分けてくれた。


「「「「「「美味しーい!」」」」」

 普段家族でクリ〇〇スをお祝いできない子供たちだが、今日は違う。みんなクリームをほっぺに付けながら、ワイワイガヤガヤ笑顔で楽しんでいる。うんうん、この笑顔を見れただけであたいたちも頑張った甲斐があるよ。


 みんながケーキとチキンを食べ終えたタイミングで、今度は結衣ちゃん(ヒメ神様)が真っ白い大きな袋を持って奥から登場。


「それじゃあ良い子のみんなにわらわからプレゼントなのじゃ」

 綺麗にギフト包装されたプレゼントをそれぞれの子に渡していく。


 子供たちが渡された袋をさっそく開けると中から自分たちが欲しかった絵本、人形、ボードゲームなどが出てくる。


「「「「「わあー、ヒメ神サン〇様、ありがとう!」」」」」

「うむ、来年もヒメ神社の清掃活動、頼んだぞ」

「「「「「はいっ!」」」」」

 みんなの感謝の言葉に結衣ちゃん(ヒメ神様)も満足そうだ。もちろんあたいは一口も食べられなかったけれど、今晩の新田家での食事が今から楽しみだね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る