第四十一話 緑の丘蕎麦の会の試作メニューを頂きました

 緑の丘では蕎麦の栽培も盛んだ。秋蕎麦は九月下旬に白い蕎麦の花が咲いてくる。味、香り、のどごし抜群の緑の丘産そばはノブ蕎麦として有名。また生仕込み本格蕎麦焼酎「蜂右衛門」も陸くんのお父さんと陽菜パパの晩酌に欠かせないものらしい。


 地元のお蕎麦屋さんが地産地消ということで地元の蕎麦粉を使っているのだが、数年前から栄養学を学ぶ洋和女子大生と緑の丘蕎麦の会が共同開発したそばメニューが有名で、新蕎麦が収穫される十月下旬から十一月上旬にかけ、変わり種の蕎麦メニューが毎年限定メニューとして提供されている。


◆◆◆


 そんな中、洋和女子大生のメンバーの一人である島さんが知り合いの陽菜に試食の相談を持ち掛けてきた。今日は陽菜の家で陸くんとあたいも招待されて、そば打ち体験&変わり種蕎麦の試食会だ。


 そば打ちの順番は水回し→練り→延し→たたみ→切りとなる。いきなり十割蕎麦は難しいので、今日は二八蕎麦(そば粉八割に対してつなぎ粉を二割)だ。島さんの指導の下、陸くんがキッチン台でそば打ちを行っている。


「陸、なかなか上手じゃない」

「そ、そうかなぁ? 初めてなのでちょっと……」

 島さんがそば打ち初体験の陸くんを褒める。


「うふふ、いいんじゃない。陽菜にも格好いいところ見せられて♡」

 女子大生に褒められて満更でもない陸くん……。ダメ、浮気しちゃダメだよ!


 お蕎麦を美味しく食べるコツは挽きたて・打ちたて・茹でたての3たてなので、さっそくお蕎麦を茹でつつ、変わり種蕎麦の作成へと移る。


「陽菜ちゃん、そろそろお蕎麦が茹で上がるわよ」

「はい。こんな感じでいいですか?」

「そうそう、上手い上手い」

 さすがに女子大生、年下の二人を扱うのは手慣れたものだ。


「じゃあみんなで頂きましょう」

「「いただきまーす」」


 今日の試食は二品。まずは和の鴨そばと洋のカルボナーラを融合させたお蕎麦で、そばつゆとチーズの濃厚さが特徴だ。もう一品は豆乳とごま味噌が合わさったコクが深いまろやかなお蕎麦。陸くんと陽菜の表情を見ると、どちらも美味しいみたい。


「「うん、どっちも美味しい(わ)」」

「本当? じゃあ今年はこれを提案してみようかしら」

 島さんも試作品が好評で満足気だ。


「はい、ももにもお裾分け!」

「ワフゥ(いただきます!)」

 そう、あたい(犬)が蕎麦を食べても大丈夫。さすがに濃い味付けはマズイので、蕎麦本来の味をカリカリのトッピングで。あたいの好きな納豆も一緒にね。


「納豆蕎麦かぁ……。ももは昔から食いしん坊だからね」

「そうそう、一気にゴックンしないで味わって食べるんだぞ」

 陽菜と陸くんがあたいの食い意地にあきれながら頭をなでなでする。


 うん、ご馳走様でした。あたいも緑の丘のお蕎麦が大好きになったよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る