第三十六話 七夕に願い事をしました その一

 季節は初夏。あたいはつい先日二歳になった。一歳の誕生日と同じく、新田家のみんな、そして陸くんの恋人になった幼馴染の陽菜(新田家の家庭内順位暫定六位)にも犬用ケーキでお祝いされた。本当にあたい、みんなに愛されて幸せだよ。


 これからはあたいの苦手な暑い日が続く。そうは言っても新田家の室内は文明の利器、エアコンのおかげで快適な室温だ。今日もお母さんと一緒に午後の情報番組を視聴した後は、寝床でスヤスヤお昼寝している。


「もも、そろそろ散歩に行くぞ」

 陸くんが腹出しで寝ていたあたいに声をかける。

「クゥンクゥン(行きます、行きます)」

 大の散歩好きであるあたいは喜んで飛び起きた。


◆◆◆


 マンション前で陸くんの恋人の陽菜と合流し、いよいよ楽しい散歩へ出発! というところで邪魔が入った。


 駅前のホテルから見覚えのある女が歩いてくる。隣には見知らぬ外国人の女の子。陸くんと陽菜よりも少し年齢は上かな。


 あれは『Shiba-Inu』編集部の高野美咲だ。なぜ彼女がこんなところにいるのかしら?


「高野さん、こんにちは。こんなところでお会いするなんて奇遇ですね」


 陸くんが彼女に挨拶する。あたいは前回のこと(記憶操作であたいの秘密を忘れさせた)もあり、あまり関わり合いになりたくない。


「本当ね、取材から一年二か月ぶり⋯⋯かしら。今回はちょっと知り合いのお嬢さんの観光案内を頼まれてね。昨日国際空港に到着して緑の丘に直行してきたの」

「なるほど。ここは空港からも近いですし、ネズミーランドにも電車で行けば直ぐですもんね」

「えぇ、その通りよ」


 陸くんがそう答えたタイミングで外国人の女の子が挨拶してきた。


「はじめまして。私の名前はアイリーンよ。皆さんよろしくね」

「あたしは陽菜、こちらこそよろしくね」

「俺は陸。こっちは飼い犬の⋯⋯」


「まぁ! もふもふした可愛いワンちゃんね♡」

 陸くんが紹介する前に我慢出来なかったのか、アイリーンがあたいの身体を触ってきた。いゃん、くすぐったいの。


「この子は黒柴犬のももちゃんって言うのよ」

 高野美咲がアイリーンにあたいを紹介する。


「ももちゃんかぁ⋯⋯」

「そう言えばアイリーンさんって、日本語お上手ですよね」

 陽菜がアイリーンの流暢りゅうちょうな日本語を褒める。


「えぇ。私、小さい頃から日本のアニメと漫画が大好きで、日本語を猛勉強したの! あと魔法少女のコスプレも得意なのよ」

 アイリーンがえっへんと胸を張るが、年相応でないたわわな胸が目の前でブルンと揺れ、陸くんが慌てて視線をらした。


 陸くん、顔が赤いね。高野美咲も苦笑いしている。


「陸のエッチ! アイリーンさんのコスプレ姿を想像してたでしょ」

 陽菜が陸くんの横腹をギュッとつねる。


「痛、イタタタ⋯⋯おっぱいなんて全然想像してないから!」

 陸くんが泣き顔で陽菜に言い訳している。


「何ですって!⋯⋯えぇ、どうせあたしは胸が小さいわよ!」

 陽菜が自虐的に答える。


 やれやれ⋯⋯夫婦喧嘩は犬も食わないって言うから、あたいは無視することにしました。


「ほらほら、二人とも喧嘩しないで。ところでお二人さん、この後少し時間あるかな?」

 頃合いを見て高野美咲が二人の仲裁に入った。


「はい、これからももの散歩に行くところですが⋯⋯」

「ならちょうどいいわ。アイリーンも今日一日暇で暇で退屈していたところなの。是非緑の丘の観光スポットを地元のあなた達に案内してもらえないかしら」


「分かりました。とは言っても田舎だからアイリーンさんにはあまり面白くないかもしれませんよ」

「(小声でボソッと)そんな訳ないでしょ。だって目の前に凄く面白い犬がいるじゃない⋯⋯」

「んっ。高野さん、何か言いました?」

「ううん、全然。気のせいじゃないかな〜♪」


 あたいも小声だったのでよく聞き取れなかったけど、結局この後みんなでいつもの散歩コースを歩くことになった。


****************

【side高野美咲 身辺警護 前編】


 七月初旬のある日、私はオモテの仕事である『Shiba-Inu』編集部から地下鉄で数駅の市ヶ谷駅に降り立った。


 私は大学時代にスカウトされ、ある対外諜報機関の特別エージェントとして働いている。今日はウラのお仕事の関係で私の上司からの指令を受け取るため、市ヶ谷にある某所へと出向いている。


 コンコン……。

「どうぞ。入りたまえ」


「はっ。高野美咲、失礼いたします」

 ドアをノックして入室し、上司に対し敬礼する。


「高野特尉、よく来てくれた。まぁ座りなさい」

 デスクに座り、書類に目を通していた上司がソファーに座るように促した。


「失礼します」

 私は少し緊張しながらソファーに腰掛ける。


 私の上司、尾崎一佐は防衛省情報本部対外諜報部の長だ。対外諜報部の主な任務は国家の危機に関する情報収集と仮想敵国や敵性国家のスパイ摘発となる。ちなみに仮想敵国とは将来わが国と軍事的な衝突が発生する可能性がある国で、一方敵性国家は今まさにわが国に対して敵対的な行動をとっていると認定された国のことだ。


 筋骨隆々とした尾崎一佐は陸上自衛隊の第一空挺団に所属されていたことがあり、将来を期待されたエリート軍人だったが、任務中の怪我のため、こちらの対外諜報部に異動された異色の経歴だ。ちなみに尾崎一佐の息子さんは新聞記者をしているそうだ。


「さっそくだが特尉。この資料を見てくれ」

 尾崎一佐が私に資料を手渡す。高校生ぐらいの外国人の可愛らしい少女の写真と一緒に詳細な情報が記載されている。


「今回の君の任務はこの写真の女性を警護することだ」


「尾崎一佐、我々の任務は対外諜報が主任務と認識しておりますが……」

 任務に対して異議を唱えない主義の私だが、今回は通常と異なる任務のため、念のため確認したかった。


「君が疑問に思うのも分かる。この女性の父親は現在我が国の仮想敵国CでIT企業のエンジニアをしており、我が国への亡命を希望しているのだ」


「亡命とは穏やかではありませんね」

「君も知っているだろう。仮想敵国Cがスマホのアプリから我が国の機密情報を入手していることを」

「それは公然の秘密ですね」

 仮想敵国Cがスマホのアプリで交わされた情報を取得し、自国の経済的・軍事的利益へと繋げているという噂は以前から囁かれていた。


「亡命するエンジニアはその重要な秘密を握っており、今回の亡命が当局に漏洩すれば即刻国家反逆罪で家族もろとも闇から闇へ消される運命なのだ」

「彼はなぜ亡命を決意したのでしょうか?」

「彼の幼馴染であるジャーナリストがこの秘密を全世界に暴露しようとした結果、当局に拘束されて拷問を受け、殺害された。彼はそれが許せず、今回日本大使館に亡命を打診してきたのだ」


 尾崎一佐はその上で写真の女性を指さす。

「彼女の名前はアイリーン。彼の一人娘だ。奥さんは十年前に病気で亡くなっており、彼以外の親族はいない」


 私はもう一度写真の女の子を見る。写真の中で彼女は父親と一緒に幸せそうな表情をしている。 


「彼の亡命を秘密裏に行うにあたり、まず彼女を保護する必要がある。幸いなことに高校の夏季休暇が始まるこのタイミングで彼女は日本に観光来日予定だ。そこで君には彼の亡命が完了するまでの間、彼女の身辺警護をお願いしたい」


「ご命令謹んでお受けいたします」

 今回の任務は魔女見習いを卒業するためにも私にとって重要な意味を持つ。


「ありがとう、特尉。彼女は来週七月六日に日本へ来日する。私の古巣の第一空挺団が君をカバーできるよう、彼女には基地近くにある緑の丘のホテルで待機してもらう手筈となっている」

「えっ? 緑の丘……ですか」

「そうだ。何か問題があるのかね?」

「い、いえっ。特に問題はないのですが……」


 私は先日緑の丘で柴犬ももの拉致に失敗していた。このタイミングで緑の丘に行くことになるとは、何という偶然だろう。


「ではアイリーンの身辺警護をよろしく頼む。ただし今回の任務には仮想敵国Cの妨害が入る危険もある。そこで君の持つ魔女としての力に期待しているぞ」

「はっ!」


 尾崎一佐に敬礼。尾崎一佐も答礼し、私は退室した。


◆◆◆


 七月六日午後、私は首都の東にある国際空港の国際線到着ロビーにいた。


 警護対象であるアイリーンの乗った飛行機は既に三十分前に空港へ到着している。


 私は私服姿でやや短めのスカートを履き、携帯用の銃を右足太もも内側のガーターホルスターに装着している。今回の任務では彼女に不安を与えないよう、オモテの顔である『Shiba-Inu』編集部員の高野美咲としてアイリーンに伝えるよう、彼女の父親と口裏合わせしているため、銃の所持が彼女に見つかると厄介なのだ。


 また基本的に荒事では制圧用魔法を使うことが多い私だが、衆人環視の中での魔法使用はご法度はっと。もしバレたら軍法会議ものだ。想像しただけでブルッとくる。


 銃なんて使わないで済めば一番良いんだけどね。


 さらに二十分が経過。ようやくアイリーンの搭乗した飛行機の便名タグをスーツケースに付けた旅行者が大勢出て来た。


 そろそろね⋯⋯私は警護対象の顔写真を今一度チェック。英国人だった曾祖母の影響もあり、我が家では当然英語などの外国語学習が必須だった。もちろん待ち札にも英語でアイリーンのフルネームを書いてある。


 私の待ち札を見て一人の外国人少女がこちらに近づいてきた。眼鏡をかけており、利発そうな女の子だ。でもあの歳(たしか高校一年生)で私よりも胸あるんじゃないかしら⋯⋯?


 小さな旅行用スーツケースを引きながらアイリーンが笑顔で挨拶してくる。


「こんにちは。はじめまして!」

 英語ではなく、かなり上手な日本語だった。


「こちらこそはじめまして。私の名前は高野美咲。ミサキって呼んで頂戴。あなたがアイリーンね」

「はい、アイリーンです。パパからは日本の友人である高野さんに日本滞在時の観光案内を頼んだって聞いています。ミサキさんは雑誌の編集者なんですよね」

「えぇ、そうよ。日本犬、主に柴犬の雑誌を刊行しているの。ところでパパは他に何か言ってた?」

「特には何も⋯⋯。初めての日本観光を楽しんでおいでって言われました。おまけにお小遣いまでたっぷりもらいました」


 彼女は写真の中と同じく屈託のない笑顔でそう答える。どうやら父親は彼女に今回の亡命については一言も話していないようだ。


「こんなところで立ち話もなんだから、そろそろ私たちが滞在するホテルに移動しましょうか」

「そうですね。憧れの日本に来られてちょっと有頂天になっていました」

「それにしてもアイリーンは日本語お上手よね」

「はい、昔から日本のアニメと漫画が大好きで日本語を猛勉強しました」

「あぁ、それで⋯⋯」


 仮想敵国Cからの尾行者がいないか、私は周囲を警戒したが、尾崎一佐が護衛につけてくれたチームメンバー以外は今のところ警戒すべき人物は見当たらなかった。


「じゃあ行きましょう。今日から緑の丘にあるホテルに滞在してもらうわ。なんと温泉もあるのよ」

「温泉! それは今から楽しみです」


 私は認識阻害の魔法をかけてから、アイリーンのスーツケースの取手を持ち、車を停めた駐車場へと二人で向かった。


◆◆◆


 私とアイリーンは国際空港から車で移動し、緑の丘の滞在ホテルへ到着。すぐにチェックインした。


「はい、アイリーン。これがあなたの部屋のカードキーよ」

「ミサキ、ありがとう」

 パスポートをバッグにしまいながらアイリーンがキーを受け取る。


 部屋はもちろん別々だが警護の都合で隣同士。ダブルベッドの部屋なので寝心地は良いはずだ。


「ねぇ、お部屋で少し休憩したら、温泉の大浴場に行ってみない?」

 警護対象と一緒に行動する必要があるため、私から提案してみた。


「わぉ、温泉! でも日本では裸でお風呂に入るんですよね? 他人に裸を見られるなんて恥ずかしいな⋯⋯」

 顔を赤く染めるアイリーン。


 内心、私の方が(胸の大きさで負けて)恥ずかしいわよ‼︎ と叫びたかったが大人だから自制した。


 推定だが彼女は間違いなくDカップはあるだろう。日本人男性が一番好きなおっぱいのサイズだ。


 ま、まぁ、小ぶりなCカップだって可愛いという男性も中にはいる筈だし、そんなに気にしなくてもいいよね!


◆◆◆


 そしてお約束ではあるが、アイリーンと裸のお付き合い。まだ夕方ということもあり、大浴場の利用者は他にいないようだった。


「わぁー広ーい!」

 アイリーンが初めての温泉にはしゃいでいる。大浴場のほかにサウナと露天風呂もある。


「最初にここでお湯を身体にかけるのよ」

 私はアイリーンに声を掛けて一瞬固まった。


 やはり⋯⋯私の推測通り彼女はDカップだった。しかもハリがあるおっぱい⋯⋯。私は敗北感に打ちひしがれる。うぅ、美咲、悲しくなんてないもん!


 その後二人で背中を洗いっこし、露天風呂につかる。こちらは黒茶色の温泉。緑の丘の地下深くに眠る太古の植物成分だとも言われているが、疲労回復等に効果のあるナトリウム炭酸水素塩泉で身体の芯から温まるのだ。


「あ〜いいお湯。はぁ癒されるわ〜」

「ふふふ。アイリーンったらすっかり日本の入浴習慣に適応しているわね」

「はい。私の国ではお風呂に入るよりシャワーを浴びるのが一般的なんです。私は日本文化を勉強したからそれほど違和感なく入れますけど」

「たしかに。普通は抵抗あるかもね」


 私たち二人は温泉とサウナを堪能したのだった。


◆◆◆


 温泉入浴後、近くの焼肉料理店で夕食を食べる。彼女の国でも日本の和牛は有名らしく、美味しそうにお肉をほおばっている。結構会計いきそうだけど、これも任務。後で尾崎一佐にお願いしよう。


 無邪気な彼女を見ていると、まるで自分の妹のようにも感じてくる。絶対に彼女を守らないと⋯⋯。


 ホテルへの帰り道、上空から私たち二人を監視するかのように飛ぶドローンに気づいた私は改めてそう決意した。


 翌日ホテルで目を覚ました私はアイリーンの無事を確認する。昨夜の不審なドローンについては既に報告済みだ。アイリーンの部屋には認識阻害魔法をかけてあるので、普通の人間にはドアの存在が認識出来ず、ただの壁に見える筈だ。


「アイリーン、おはよう。モーニングコールよ」

「ふぁぁ⋯⋯ミサキ、おはようございます」

「あらあら、お寝坊さんね。身支度が整ったら一階で一緒に食事を取りましょう」

「分かったわ」


 アイリーンが内線を切るとすぐに私は護衛に必要な準備を始めた。アイリーンの父親は昨夜日本大使館へ亡命を図ったはず。当局は娘のアイリーンの居場所を血眼で探し出し、ようやくこのホテルへとたどり着いたのだろう。ホテルにいる限り、護衛チームもいる関係で敵も表立っては行動出来ないと思うが、父親の身柄をわが国に要求するためにも必ず彼女を拘束しようとするだろう。さて⋯⋯どうしたものか。


 今から別の隠れ家に移動するのは警護の都合上難しい。また空挺団の基地に駆け込むのも外交問題に発展する懸念がある。あくまで秘密裏にこの問題を解決する必要があるのだ。


 思案した結果、私は一つの素晴らしいアイデアを思いついた。一般市民を巻き込むのは絶対に避けなければいけないことだが、今回は柴犬一匹だけだからおそらく問題はないだろう。


 も・も・ちゃん、今日こそ一緒に遊んでもらうわよ♪


◆◆◆


 その日の夕方、敢えて私はアイリーンとホテルから外出した。警護チームにも事情は伝えてある。


 そして新田家の住むマンションへと向かう。この時間に新田陸と幼馴染の大和田陽菜が日課のももの散歩に出かけるのはあらかじめ調査済みだ。


 昨夜と同じく上空には不審なドローン。だが大事の前の小事、今は無視しよう。


 マンション前で新田陸と恋人の大和田陽菜が合流し、いよいよ散歩へ出発! というところで偶然を装って近づく。


「高野さん、こんにちは。こんなところでお会いするなんて奇遇ですね」


 新田陸が私に挨拶する。


「本当ね、取材から一年二か月ぶり⋯⋯かしら。今回はちょっと知り合いのお嬢さんの観光案内を頼まれてね。昨日国際空港に到着して緑の丘に直行してきたの」


 本当は先日のユリノキつつじ祭り以来、二か月ぶりの再会なのだが、向こうは変身した私だと認識していなかったので少し言葉を濁す。


「なるほど。ここは空港からも近いですし、ネズミーランドにも電車で行けば直ぐですもんね」

「えぇ、その通りよ」


 その時、アイリーンが二人に挨拶した。


「はじめまして。私の名前はアイリーンよ。皆さんよろしくね」

「あたしは陽菜、こちらこそよろしくね」

「俺は陸。こっちは飼い犬の⋯⋯」


「まぁ! もふもふした可愛いワンちゃんね♡」

 新田陸がももを紹介する前に我慢出来なかったのか、アイリーンがももの身体を触りまくる。


「この子は黒柴犬のももちゃんって言うのよ」

 私はアイリーンにももを紹介する。


「ももちゃんかぁ⋯⋯」

「そう言えばアイリーンさんって、日本語お上手ですよね」

 大和田陽菜が彼女の流暢りゅうちょうな日本語を褒める。


「えぇ。私、小さい頃から日本のアニメと漫画が大好きで、日本語を猛勉強したの! あと魔法少女のコスプレも得意なのよ」

 アイリーンがえっへんと胸を張るが、年相応でない胸(おっぱい)が目の前でブルンと揺れ、新田陸が慌てて視線をらした。


 やはり効果抜群だな。私は苦笑いした。


「陸のエッチ! アイリーンさんのコスプレ姿を想像してたでしょ」

 大和田陽菜が彼の横腹をギュッとつねる。


「痛、イタタタ⋯⋯おっぱいなんて全然想像してないから!」

 彼は泣き顔で彼女に言い訳している。


「何ですって!⋯⋯えぇ、どうせあたしは胸が小さいわよ!」

 大和田陽菜が自虐的に答える。


 やれやれ⋯⋯夫婦喧嘩を仲裁するか。


「ほらほら、二人とも喧嘩しないで。ところでお二人さん、この後少し時間あるかな?」


「はい、これからももの散歩に行くところですが⋯⋯」

「ならちょうどいいわ。アイリーンも今日一日暇で暇で退屈していたところなの。是非緑の丘の観光スポットを地元のあなた達に案内してもらえないかしら」


「分かりました。とは言っても田舎だからアイリーンさんにはあまり面白くないかもしれませんよ」


「そんな訳ないでしょ。だって目の前に凄く面白い犬がいるじゃない⋯⋯」

 私は小声でボソッとつぶやく。


「んっ。高野さん、何か言いました?」

「ううん、全然。気のせいじゃないかな〜♪」


 結局この後全員で散歩することになった。

 さぁ、It's show time よ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る