第三十三話 初詣ではヒメ神社の巫女(?)になりました

 新年明けましておめでとうございます。改めましてあたいは柴犬のももです。今日ヒメ神社は一年で一番の稼ぎ時となる初詣を迎えています。


 かんな山でヒメ神様と約束した通り、あたいはヒメ神社で貢献中。具体的には巫女みこ風の白と赤の服を着せられ、拝殿の近くの社務所でお札とお守りの販売を手伝っています……。


 何でも宮司さんの夢の中にヒメ神様があらわれ、『柴犬ももに巫女衣装を着せて初詣で手伝わせなさい』という、あたいにとっては有難迷惑ありがためいわくなお告げがあったそうだ。


 そう言えばかんな山ではヒメ神様の活躍で陽菜が救われたせいか、あたいの善行レベルは一つも上がらなかった。やはり自分自身で頑張らないといけないね。


「今日は頑張るぞー!」とあたいは全身をブルブルして気合を入れた。


 まずはあたい目当ての子供たちに愛想を振りまいて集客し、一緒にいる大人のお財布をゆるくするのがあたいの役割。お蔭様でペットのお守りもかなり売れているようだ。


「もも、その調子で頑張ってね!」

「そうそう、頑張ったら私特製のカリカリご飯が待ってるよ」


 なぜか陽菜と結衣ちゃんもお手伝いのため、巫女衣装になっている。顔見知りのヒメ神社の宮司さんから頼まれたらしい。ボランティアにはなるが、陽菜たちは巫女姿になれると喜んでお手伝いしているようだ。


 そうそう、先日のかんな山での一件以来、陽菜は陸くんと恋人同士になった。付き合って間もない二人は初心うぶな恋人同士ではあるけれど、二人の家族は皆応援してくれている。そういえば昨夜も除夜の鐘を聞きながら、二人は寄り添って語り合っていたっけ。


 閑話休題。


 ヒメ神社は一時期低迷していたのだが、あたいのお参りポーズで有名になったからか、今は大勢の地元参拝客が訪れている。ヒメ神様も大層喜んでおられるはずだ。


 お昼をまわった頃、二人に差し入れを持ってきた陸くんが社務所に立ち寄った。


「もも、お仕事頑張っているみたいだな。偉いぞ」

 まずはあたいの頭をなでなで。


「ワォン(うん、褒めて褒めて!)」

 陸くんに褒められてあたいも嬉しいよ。


「陽菜と結衣もお疲れ様……‼」


 陸くんがおみくじとお守りを販売中の二人に声をかけるが、陽菜の美しい巫女姿を見て言葉を失っているようだ。


「陽菜、よく似合っているよ♡」

「うぅ、恥ずかしいってば……でも嬉しい!」


 陸くんに巫女姿を褒められた陽菜が顔を赤らめてぐにゃぐにゃともだえている。何、この軟体生物は……。


 あたいはもちろん二人の恋を応援している立場なのだが、目の前でこうもイチャイチャされると「リア充消えろーっ!」て叫びたくなるね。


「ちょっと、おにい。私の巫女姿は褒めてくれないの!」

 結衣ちゃんが抗議の声を上げたが、残念ながら二人の耳には届かなかったようだ。


◆◆◆


 こうしてヒメ神社の忙しい一日が終わりを告げた。今日はみんなに愛想を振りまいて疲れたなぁ……。


 結衣ちゃん特製のカリカリご飯を食べたあたいが寝始めると、ピコーンという音とメッセージが頭の中に響いた。


「おめでとうございます! あなたの善行レベルが一つ上がりました」


 これで善行レベルはちょうど十。誰もを知らないけど、あたいにとって記念すべき日になったね。


 今日は気持ちよく寝られそう……。あたいはスヤスヤと眠りについた。

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