第二十七話 【side陸】俺は陽菜とカップルになりたい

「うふふ。あなたたち、お似合いのカップルだわ」


 コキアが紅葉する海沿いの見晴らしの丘の頂上で、昨年春に愛犬を亡くした女性から俺たちはそう告げられた。


 彼女も黒毛の柴犬を飼っていたが昨年春に病気で亡くなったらしい。俺たちはそんな彼女にももをこれからも大切にすると宣言した。


 その結果、彼女から先のが飛び出したのだが⋯⋯。


 自分の隠された想いを見抜かれたようで正直ドキッとした。片思い中の陽菜は俺のことをどう思っているのだろうか?恥ずかしくて陽菜の顔がまともに見れない。


「ね、ねぇ、陸。さっきのご夫婦、あたしたちのことをカ、カップルって誤解していたよね。な、なんか……恥ずかしいな!」

 

 そんな時、陽菜が恥ずかしそうに俺に問いかける。


『そうだな。でも俺は陽菜とカップルになれたら凄く嬉しいけどな!』

 本当はそう言いたかった。そうすれば陽菜と恋人同士になれるかもしれない……。


 だが、万が一告白に失敗したら、幼馴染の俺たちの関係は赤の他人になるほど、完全に壊れてしまうかもしれない⋯⋯。俺はそれだけは避けたかった。


「そ、そうだな。俺たちって昔から仲が良いから、まわりからはそう見えるのかな」

 俺は陽菜にそう答えるのが精一杯だった。


 俺の答えに陽菜はご機嫌斜めなように見える。もももハァーーッとため息(?)のような声を出す。

 

 まずい……選択を誤ったか。俺は自身の選択ミスを呪った。


「も、もう知らない! ……もも、あっちへ行こう」


 膨れっ面の陽菜は俺からもものリードを奪うと、そのまま麓へ下りていってしまった。


 やれやれ、これは後でご機嫌取りが必要かな……。俺は今しがたももたちが下りていった後をため息をつきながら追いかけるのだった。

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