第二十六話 【side陽菜】あたしは陸とカップルになりたい

「うふふ。あなたたち、お似合いのカップルだわ」


 コキアが紅葉する海浜公園の見晴らしの丘の頂上で、名前も知らない通りすがりの女性から去り際にそう言われた。


 え、ええーっ、それって陸とあたしがお似合いのってこと⁉


 は、恥ずかしい。あたしはまだ陸に自分の想いを伝えられていない。だからあたしたちはまだ単なる幼馴染なんだけど……。


 確かに、最近は陸と一緒にいることが多い。ももの散歩に付いていくのはもちろん、中学校も一緒(これはあたしが望んだ)。そしてお花見やキャンプ旅行、地元のお祭りにも一緒に参加するぐらい仲良しだ。


 ママと陸のお母さんが学生時代からの大親友だから、その縁で昔から陸とは幼馴染の関係なのだが、陸はあたしのことをどう思っているのだろうか。


 単なる幼馴染? それとも、こ、恋人? あたしは自分の想いを彼に隠しているが、本当に隠せているのか正直自信が無い。


「ね、ねぇ、陸。さっきのご夫婦、あたしたちのことをカ、カップルって誤解していたよね。な、なんか……恥ずかしいな!」


 あたしは陸に鎌をかけてみる。この返答次第ではあたしたち、本当の恋人になれるかもしれない……。そんな期待を込めた問いだ。


「そ、そうだな。俺たちって昔から仲が良いから、まわりからはそう見えるのかな」

 陸が少し恥ずかしそうに答えた。


『それって結局どっちなのよ⁉ ほんと、はっきりして!』

 

 あたしは陸が自分に想いを打ち明けてくれないのがもどかしい。もものことは大切にしているくせに、あたしのことはどう思っているのよ‼


 ももは歯ぎしりしているあたしをさっきからめた表情で見ている。まるであたしの隠れた想いを知っているかのようだ。こういう表情の時のももはやはり普通の柴犬には見えない……。


「も、もう知らない! (この鈍感男‼)……もも、あっちへ行こう」

 あたしはもものリードを陸から奪うと、ももと一緒にさっさとふもとへ下りていった。

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