第十一話 ヒメ神様の神通力は凄かった

「ヒメ神様。あたいです、ももです」


 あたいは陽菜の想いを聞き、さっそく拝殿の前でヒメ神様に願った。二人の想いが同じだと分かった以上、はやく”復縁”させてあげたい。


『ももよ、先ほどの陽菜とのやり取り、しかと見届けたぞ』


 ヒメ神様もすぐにあたいの前に顕現けんげんされた。神様なので、物理的な距離は関係ないが、自身の神社内であるので、最初からご覧になっていたようだ。

 

「はい、やはり陽菜も陸くんが好きなのだそうです」


 あたいは先ほど確認した事実を念のためヒメ神様にお伝えした。ヒメ神様もあたいの言葉にうなずく。


『ふむ、では神通力の行使には全く問題無さそうじゃな。よしっ、わらわの力もだいぶ回復してきたので、さっそく二人を復縁させる神通力を行使しよう。ももよ、わらわはしばらく奥にこもるので、ここで待っているのじゃぞ』


 ヒメ神様はそう言い残し、拝殿の奥へと消えた。


「ヒメ神様、どうかよろしくお願いします」


 あたいも伏せの姿勢で、神通力の行使がうまく行くように祈ってます。


 ヒメ神様が拝殿の奥に消えてしばらくすると、拝殿の中からかなりの霊気が感じられた。またそれと同時にまぶしいほどに真っ白な光の波動が神社全体を包んでいく。


「これが……ヒメ神様の神通力‼」


 の影響で高位な霊力を感じられるあたいは、今神々しい光の中にいた。そう、まるであたいが虹の橋を渡った、あちらの世界にいた時のようだ。おそらく陽菜と結衣ちゃんはこの光を認識出来ていないはず。ほんの一瞬だったが、本当にすごい奇跡をのあたりにしたと思う。


 やがて神々しい光は徐々に消えていき、いつもの神社の境内へと戻っていった。


「陽菜、何か一瞬、鳥の声が消えて静かにならなかったか?」

 陸くんの妹の結衣ちゃんが陽菜に話しかける。


「そうねぇ。たしかに一瞬何かを感じたんだけど……温かくて、心地よい気持ちにさせる何かを」

 陽菜もそう言ってコテンと首をかしげる。


 うん、なかなか鋭いわね、二人とも。あたいは二人の勘の強さに感心する。


『ふーっ、久々の神通力の行使で疲れたぞ~~』

 その時、ヒメ神様が少しお疲れの表情で拝殿から出てこられた。


「ヒメ神様、ありがとうございました。それにしても凄いお力ですね」

 あたいはヒメ神様へお礼を伝える。


『うむ、世話になったもものお願いじゃ。叶えてやらねばならないじゃろ。で、繰り返しになるのだが、わらわの神通力は離れていった二人がまた一緒の道で出会えるように強制力を働かせることができるもの。神通力は人の運命に大きく影響するため、仮に二人が離れ離れになったとしても二人の想いが続く限り、強制力は継続的に発動するのじゃ。もも、お主もよく覚えておけ』


「はい、分かりました!」


 あたいはヒメ神様をおがむため、そのままハハーッと伏せし続ける。


「でも陸くんだけにはこのこと(神通力)を伝えておきたいですね……」

『ふーむ、お主もさすがに人間の言葉はしゃべれんしな。そうじゃ、陸の夢の中で”お告げ”として伝えるのはどうかの?』

「ええっ! そんなことが出来るのですか⁇」


『そんなに大したことではない。じゃが夢の中なので、陸は夢から覚めたら覚えていないと思うぞ』

「それでも本人に直接伝えられるのであれば、ぜひ伝えておきたいんです!」


 そうして、あたいはヒメ神様と一緒に陸の夢の中へと入ることになった。

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