第十二話 【side陸】うちのもふもふが恋のキューピットだった⁉(夢の中)

 今日は学校で用事があったため、ももの散歩は妹の結衣と幼馴染の陽菜に行ってもらったが、帰ってきたももがすごく嬉しがっていたので、きっと楽しい散歩だったのだろう。


 夕食後、俺は何となく眠気を催し、自室に戻らずにリビングのソファーで横になった。さっそくももが俺のお腹の上に乗っかってくる。もふもふが気持ちいいなぁ。しばらくすると俺は完全に眠りについた……。


◆◆◆


 これは俺の夢の中だ。ぼんやりした頭でそう思う。どうやら光り輝く部屋の中にいるようだが、ここがどこだかは正直分からない。


『お主が陸か』

 突然女性の声で自分の名前を呼ばれる。


 いつの間にか百人一首の絵柄のような、十二単じゅうにひとえを着た綺麗きれいな女性が俺の前に立っていた。まるで平安時代の公家の女性のようだ。


「は、はい」

 俺は緊張しながら答える。


『夢の中ですまぬの。わらわはヒメ神社のヒメ神じゃ。実はここにいるももがお主にどうしても伝えたいことがあるそうなのじゃ』


「陸くん。あたいのこと分かる、ももだよ!」

 ももが俺に話しかけてくる。


「も、もも……がしゃべっている‼」


 俺は飼い犬がしゃべっていることに驚いた。


『ところでお主は幼馴染の陽菜が好きということで間違いないな?』

 ヒメ神様が念押しする。


「は、はい……」

 俺はさすがに隠し切れず、ヒメ神様へ自分の本心を伝えた。


『そうか、実は先ほどお主と陽菜の関係を修復するため、神通力を行使したところじゃ』


「神通力?」


 俺はヒメ神様のおっしゃっていることがイマイチ分からない。


『わらわの神通力、”復縁”。離れていった二人がまた一緒の道で出会えるよう強制力を働かせることができる。もしお主と陽菜の二人が離れ離れになったとしても二人の想いが続く限り、強制力は継続的に発動するのじゃ』


「は、はぁ……」


 俺はなぜヒメ神様が自分の想いを手助けしてくれたのかを疑問に思う。


『ふむ、確かに疑問に思うじゃろ。これはももがお主と幼馴染の陽菜との仲を修復できるよう祈ったお蔭なのじゃ。ももは人間の言葉が分かるからの』


 ヒメ神様は驚愕きょうがくの事実を明らかにした。今までの行動を思い返してみると、確かにももは普通の柴犬とは違う。


「そうなんだ。だから、ももはヒメ神社にお参りしていたんですね」

『その通りじゃ』

「陸くん、あたいは陸くんと陽菜の想いを聞いて二人の仲を修復したいと思ったの。それでヒメ神様にお願いして……」


 俺はももの言葉にうなずく。うちの柴犬が自分の恋を応援してくれる……こんな奇跡、絶対あり得ないよ。


「もも、本当にありがとう! お前は俺と陽菜、二人のだったんだね⁉」


 俺はそう言って、ももに感謝の言葉を伝えた。


◆◆◆


「うーーん」

 俺はリビングのソファーで目を覚ました。


 相変わらずももは俺のお腹の上でスヤスヤ眠っている。


「りくぅ、寝るんなら自分の部屋で寝なさいな」

 洗い物をしていた母さんが俺に声をかけてくる。


「うん、そうするよ。しっかし、さっき見た夢は何だったんだろ?」

「夢?」

「うん、何かとても大事な夢を見た気がするんだけど、それが何だったのか全然覚えてないんだ……」


 俺は無意識にももをなでなでし、そっとサークルの中のベッドへと戻した。


☆☆☆


 あたいは寝たふりをしながら、自室に帰っていく陸くんの背中に呼びかけた。


「うん、陸くん、ありがとう。あたいはその言葉を聞けただけで嬉しいよ。まだまだ二人の仲直りはこれからだけど、あたいも二人の恋のキューピットになれるよう、これからも一生懸命頑張るからね!」

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