第六話 晩秋の高原で看板犬デビューしました
十月下旬のある日。あたいと新田ファミリーは山梨県の高原へ日帰りドライブに来ている。
この高原には緑の丘と同じく、”ぼくじょう”というのがあるらしい。”ぎゅーにゅー”や”そふとくりーむ”が美味しいんだって。
お母さんの話では、今日からこの高原で『わたしたちのかんとりー』のかんとりーふぇすたというイベントが開催されるみたいで、お母さんの友達の大和田(ママ)がお店を出店するらしい。
ちなみにママさんは陸くんの
ふぇすたでは、”かんとりーざっか”や”はんどめいどせいひん”や”あんてぃーくせいひん”などが買えるらしい。
”こっとん”や”りねん”や”うーる”など、”てんねんそざい”を使った、おりじなるの”ようふく”なども買えるし、”ふーどまーけっと”もあるらしい。
お母さんと
そう、先週末にようやく三回目の”チックン”が終わり、いよいよお散歩デビュー出来るのだ。お散歩大好きなあたいとしては本当に嬉しいよ。
ちなみにあたいが車酔いしないよう、動物病院のお医者さんに貰った粒を事前に飲ませられた。
標高の高い高原は木々の葉っぱも落ち、
あたいは陸くんに抱っこされて会場を移動中。あたいより大きなかぼちゃがゴロゴロ転がってるね。
もちろん会場には飲食のお店もあり、おいしそうな匂いが漂ってくるが、とっても残念なことにあたいは食べられない。
ちなみにお父さんは帰りの運転をしないので、会場近くにあるレストランで”じびーる”と”そーせーじ”を楽しんだ後、”ひがえりおんせん”にも歩いて行くらしい。
会場の真ん中あたりに大和田(ママ)のお店があった。げげっ、お店の前にあたいの”ライバル”大和田
「おはよー、どう、売れてる?」
お母さんが大和田(ママ)に声をかけた。
「おはよう。それがどうも朝から売上が
大和田(ママ)が
「周囲のお店がコーギーやトイプーなどの看板犬を用意していて、そっちに人が集中しちゃってるのよ……」
周囲を見回すと、確かに看板犬のいるお店に人が集まり、四角い箱で何やらパシャパシャして「いむすたばえ~~♪」とか言っているようだ。
「うーん、それは困ったわね……そうだ! ねぇ、うちのももを看板犬にしない?」
「看板犬?」
「そう、この”あんてぃーくてーぶる”の上にチョコンとももが乗って、お客さんに笑顔で挨拶すればきっとこちらも集客できるはず」
「うん、ママ、あたしもそれに賛成‼ ももちゃん、一緒に頑張ろうねっ‼」
あたいはちょっと不満だが、陸の幼馴染の
「陸も
そう言いながらお母さんが何故か陸くんにウィンクしている。
うん、なんでかな?
「もぉ、分かったよ。手伝えばいいんだろ。もも、一緒に頑張ろうな!」
陸くんは少し恥ずかしそうに言いながら、あたいをなでなでした。
はい、あたいも頑張りますよっ。
そうして、あたいは大和田ママのお店の看板犬となった。まずは最近ようやく覚えた笑顔(にこっと笑って舌を出す)を振りまいてみよう。ニコッ。
「きゃーっ、何この子犬、可愛い~~」
「はーい、いらっしゃいませ。よろしかったら中の商品も見ていってくださいね」
さっそく若い女性のお客さん二名ゲット!
その後もお昼をまたいで夕方まで店頭であたいは愛想を振りまいた。
◆◆◆
お昼にはいったん休憩し、陸くんと陽菜に連れられて、”ふーどまーけっと”に出かけた。あたいはカリカリご飯とお水を用意してもらい、二人の隣でガツガツ食べる。
桃すむーじーを飲んでいる陸くんの表情には出ていないが、内心陽菜と一緒にご飯が食べられて、かなり嬉しがっているのではないかしら。ちょっと悔しい。
そして初日のふぇすたは無事終了した。
「「ももちゃん、ありがとね‼」」
大和田(ママ)と陽菜が
◆◆◆
帰りの車中ではお母さんと結衣ちゃんがお目当てのざっかを買えてホクホク顔だ。お父さんは助手席でグーグー寝てしまっている。陸くんは車窓から外を眺め、何やら
日帰りで疲れたけど、お店に貢献できたかな。
帰りの車の中であたいがうとうとしてると、またピコーンと音が。
「おめでとうございます! あなたの善行レベルが一つ上がりました。さらにスキルに霊感が追加されます」
うんっ、霊感? どんなスキルだろう。
あたいは疑問に思いつつも、陸くんの膝の上で気持ちの良い眠りについた。
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