序章その二 あたいにはまだ名前がない

 あたいは柴犬である。名前はまだない。


 今は母ちゃん犬のお乳をたらふく飲んで、弟犬たちとまったりうたた寝の最中……。赤ちゃん犬に出来ることといえば、食っちゃ寝以外に無いもんね。


 昨日は母ちゃん犬の飼い主に連れられて姉弟犬で近くの野原に行き、何やら四角いものでパシャパシャされた。飼い主はそろそろ歯も生えてきたので、離乳食にしないとって言ってたね。


 あれっ、なんで犬なのに人の言葉が分かるのかって? それは神様にもらったがあるからだよ。


 季節は初夏。ここは山と大きな川の近くにあるため、お空が暗くなる頃には頻繁ひんぱんに、ピカッ、ゴロゴロ、ドォーンっていうのがやってくる。


 前世ではかなり苦手だったけど、今世ではスキルの影響でそこまで怖くはない。


 これからどうなるのかなぁ……。あたいはゴロゴロが鳴る中、つい先日神様と出会った時の事を夢見心地ゆめみごこちで思い浮かべていた。


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