第一章 幼馴染の恋が成就するまで
第一話 虹の橋の向こうで神様と出会いました
前世のあたいは元々
子犬の頃、飼い主の事情でペットホテルに何日か預けられた際、性格の悪い女の店員に
それからは女性の手が近づいただけで怖くて、つい本気で噛んでしまい、それで嫌なことを避けられると分かってからは、さらに噛み癖がエスカレートしてしまった。
気づいた頃には飼い主にも恐れられる狂暴犬の誕生……。でもあたい自身ではどうしようもなく、その状況はあたいが病気で死ぬまで続いた。
最期の瞬間、飼い主の手の中にある
◆◆◆
次に目が覚めたのは何だか輪郭がボンヤリした、ふわふわした場所だった。
そういえば病気の間は呼吸が苦しく、かなり強い痛みもあったけど、今は全然痛くない。ようやく目が慣れてきたので、あたりを見回す。
あたいの目の前には大きな虹色の橋が架かっており、その橋の手前では何匹もの犬たちが懐かしい人たちとの再会を喜ぶように尻尾をブンブン振って、一緒に橋を渡っていた。何となく
あたいも橋の手前で飼い主が来るのを待っていようかな? でも狂暴犬って怖がっていたから逆に迷惑かもしれない。
「おーい、そこの柴犬くん」
あたいが真剣に思い悩んでいると、突然後ろから声をかけられた。
「はい、あたいに何の御用でしょうか?」
「お前を神様が呼んでいるんだ。さぁ、早く橋を渡って、渡って!」
どうやら橋の管理人のおじさんらしい。神様って誰? と思ったが、とりあえず言われた通りにしよう。あれ、そういえば何でおじさんの言葉が分かるのかな⁇
「さぁ、早く神殿に行った、行った!」
「おじさん、ありがとう」
あたいはペコリと一礼し、虹色の橋を渡っていく。橋全体がレインボーでキラキラしており、何とも言えない踏み心地が肉球を通じて伝わってくる。
程なく向こう岸が見えてくると、少し先にすごーく大きな建物が建っていた。
あたいはこんなに大きな建物を見るのは初めてだったので、尻尾がお尻に入るぐらい、すごくビビってしまう。ここが神様のお住まい(神殿)なのかな?
門番のおじさんにあたいの名前と用件を伝えると、既に連絡が入っていたのか、すぐに神殿の奥にある一室に案内された。
◆◆◆
壁と天井には綺麗な絵が描かれ、床にもすごく高そうなふわふわ絨毯が敷かれており、ここで寝たらどれだけ気持ちいいだろうなって思ってしまう。
『よく来たな。柴犬の〇〇よ』
威厳のある声で神様が声をかけて下さった。
白いお
「初めまして神様。お急ぎの用事と伺いましたけど」
あたいは神様の前でお座りし、ペコリと頭を下げた。
神様は手元にある書類らしきものを手にしながら、あたいに用件を伝える。
『すまぬの。実は今日出産する柴犬の子犬としてお前を転生させることにしたので、急ぎお前に会う必要があったのじゃ』
「えっ! またあちらの世界に行けるのですか?」
『ふむ。お前には事情があるにせよ、人々を何度も傷つけた前世の罪を償うため、もう一度生まれ変わって
「
『そう、例えば誰かを助けたり、親切にしたり、よい行ないをすることだ』
確かにあたいにも前世の罪を償いたい気持ちはある……けど。
「あたいは臆病で怖がりな性格なので、人見知り、犬見知りするんです。前世でもぼっちでしたし……そんなあたいでも
あたいの切実な訴えに対し、神様も少しだけためらった後、こうおっしゃった。
『うーん……それは困ったな。そうじゃ!! お前には特別にスキルを授けよう』
「スキル……ですか。それはどのようなものなのでしょうか?」
『ふむ。スキルというのは便利なものでな。最初に授けられるのは”危険察知”と”人語理解”の二つだけじゃが、お前が善行を積んでいく中で、善行レベルが上がると持っているスキルのレベルが上がったり、新しいスキルが追加されることもある』
「へーっ、それは便利ですね」
『ホッホッホッ、その臆病な性格も少し直しておこうかの』
神様が手をかざすと、ポオッとあたいの体全体が輝いた。しばらくすると体の中から今までにない力が湧いてくるのを感じる。
「神様、ありがとうございます! 何だかとっても勇気が出てきました‼ それでは必ずや善行を積んで参ります」
『うむ。今度こそ頑張るのじゃぞ。あと、お前に授けた二つのスキルについては実際に使ってみて、自分自身で確認してみなさい』
優しい神様の声が途切れると、今度はストンと落ちるような感覚があり、あたいは急に意識を失った。
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