第33話:暇つぶし

「できました~」


 テーブルの上で戦っていたミニチュアサイズのウッドマンたちの格闘戦を見ていたら、いつの間にかもうそんなに時間が経っていたようだ。


「いやースタイリッシュな動き連続で見ていて面白かったよキーコ」


「ん」


 キーコは相変わらず無表情だが、どこか浮かない様子だ。


 もしかしたらキサラギにウッドマンを斬られたことをまだ気にしてるのかもしれない。


「失礼します~」


 木の器に盛られた白米と味噌汁が俺の前に置かれた。


 おかずは焼いた川魚だ。


 魚の焼けたいい匂いが食欲をそそる。


 実に日本食で懐かしい気分に浸れた。


「ありがとうスイ子さん。じゃ、いただきます」


 手を合わせてから木の箸を取り、白米の入った器を手に持って、箸で白米を掴んで口に運ぶ。


「…………」


 白米特有の食感と甘みが口の中に広がる。


 次は味噌汁を手に取り、そのまま一口分を口に含む。


「…………」


 こっちは何か物足りなさを感じたけど、味噌汁だった。


 なんだろう、鰹節とか昆布出汁が足りないのかな?


 でも美味しい。


 焼いた魚はしっかりと塩味が聞いていて、ご飯が進む。


 塩もシャトルが買ってきてくれたやつかな。


「ああ、美味しい……」


 思わず口にだしてしまうほど、今の俺は満たされていた。


「おかわりはまだありますからね~」


 手が止まらず次から次へと口へ運び、最終的に三杯もおかわりしてしまった。




「ふぅ~……お腹いっぱいで満足だよ」


「喜んでもらえれて良かったです~」


「それではご主人さま、スイ子と一緒にお米用の田んぼを作ってきますね」


「あ、うん、任せたよ」


 アス子が土壌を用意してスイ子さんが水を流す。


 この二人がいればどこでも何でもできそうだ。


 それにしても──


「暇だな……」


 この世界にはネットも娯楽も何もない。


 暇を潰す物がないので超暇だ。


「ん」


「はい」


「ん?」


 キーコが御影を連れて外に出ていった。


 なんだろう?


 しばらくしたら二人が戻ってきたけど、二人の手にはボードと駒が乗っていた。


「はい」


「どうぞ」


 キーコは将棋盤を、御影は石で作られたチェス盤だ。


「おお、こんな物まで作れるんだ!」


「余裕」


「お相手は自分にお任せください」


 その日はキーコたちと飽きるまでボードゲームで遊んだ。


 なお俺は一勝もすることができなかった。

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