第11話:冒険者たちの自己紹介
アス子の生成したアースゴーレムのおかげで、家まで一瞬でたどり着く。
アースゴーレムの手のひらから全員降りて、家の前にやってきた。
「ここが俺の家です」
アス子とスイ子さんとキーコの合作である、二階建てのログハウスを冒険者たちに紹介した。
「……信じられない、本当に家があるなんて」
魔法使いのミザリィが信じられない物を見るように口を開いた。
ミザリィの気持ちも理解できる。
普通に考えたらこんな辺鄙な場所にこんな立派な家が建っているなんて、到底信じられないだろう。
「ここが君の家なのか……」
冒険者パーティーのリーダー、ガーランドの額から一滴の雫が流れていた。
「こんなところにどうやって作ったんですか……?」
金髪の青年剣士、ジェスが戸惑うように聞いてくる。
「えっと、この三人が協力して作ってくれました」
俺はアス子とスイ子さんとキーコの三人を並べて紹介する。
「アースドールのアス子です」
「ウォータードールのスイ子です~」
「ウッドドールのキーコ」
三人は俺が言わずとも自ら自己紹介をしてくれた。
「……畑まであるのね」
ミザリィが畑に気がついた。
「そうですね、アス子が耕してくれて、育てる物はキーコが集めてきてくれています。あ、水は──」
「お水はわたくしが用意いたします~」
スイ子さんが水芸のように人差し指から水をぴゅーっと出していた。
「……ということですね」
「はぁ~……呆れたを通り越して笑えてくるわね」
ミザリィは何かを諦めたような表情だ。
「とりあえず外で立ち話もなんですし、中へ入ってください」
いつまでも外で立ち話するのも疲れるので、全員を家の中へ招き入れる。
「あ、靴はここで脱いでください」
衛生上も考えて土足厳禁にした。
「……どうして靴を脱ぐ必要があるのか、教えてもらってもいいかね?」
ガーランドが訝しむように訪ねてくる。
防具である具足を外すというのは、やはり抵抗があるのかもしれない。
「衛生上の問題ですね。汚れたらそこから病気に元になる菌とかが出るかもしれませんし」
「えーせーじょー?」
ミザリィが首を傾げていた。
どうやらこの異世界には衛生という概念がないようだ。
「単純に、土足だと汚れて掃除の手間が増えてしまうっていうのもあるので、ご理解いただけると助かります」
「……分かった、従おう」
ガーランドが足のプレート装備を脱ぎ、ミザリィやジェス、他の冒険者たちも脱いで理解を示してくれた。
「ありがとうございます」
全員が靴を脱いで上がり、そのままテーブルまで誘導して座ってもらう。
「キーコ、スイ子さん、あのリンゴの準備をしてもらっていいかな?」
折角の来客なので何か出さないといけないと思い、スイ子さんとキーコにリンゴの準備をしてもらう。
「分かりました~」
「ん」
「ありがとう」
二人に指示を出してから居直り椅子に座って冒険者たちを見ると、俺を見ている者や家の中を見ている者、ドールたちを見ている者など、各々の反応を示していた。
これから冒険者たちとの話し合いだが、彼らはどこまで話してくれるだろうかと不安になりながらも、俺は口を開いた。
「それでは改めまして、家主の栗江田形人です」
お辞儀をして挨拶をする。
「そちらも改めて皆さんのお名前を聞いてもよろしいですか?」
偽名を名乗られるかもしれないけど、一応名前は聞いておきたかったので、相手の紹介を促してみる。
ガーランドは仲間を見渡し頷き口を開いた。
「……ああ、私はガーランドだ。さっきも名乗ったがこのパーティーの臨時リーダーをしている」
続いてミザリィ。
「アタシはミザリィ。魔法使いで研究者よ」
次はジェス。
「僕はジェス。剣士だ」
そして次からまだ名乗りを聞いていない残りの三人。
その内の一人、何かの素材でできた杖を持った、気の弱そうな白ローブのフードを被った少女と目が合う。
「わ、わたしはリリン、です。パーティーのヒーラーを任されています……」
「……ティグレス」
俺に弓を放った男の名前はティグレスだった。耳が尖っているということは、いわゆるエルフという種族なのかもしれない。
それ以上は語らず最後の男に視線が映る。
「オレはローランドだ。そこの女と同じ魔法使いだよ」
ふてぶてしい態度で自己紹介をしてくれた男も、やはりミザリィと同じ魔法使いだ。
その黒いローブ姿から想像していたが、間違いではなかったみたいだ。
「……ありがとうございます」
ひとまず名乗ってくれたことに対して礼を言っておく。
この話し合いでどれだけこの世界の情報を教えてもらえるか、頑張らないといけないな。
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